第70章 特別
「お疲れ様……って、す、凄い荷物だね……」
みわは、更衣室から出てきたオレの両手の荷物を見て言葉を失っていた。
いや、オレ自身も結構ビックリな量だ。
バスケ部メンバーから貰ったプレゼントと、ロッカーや下駄箱に押し込められていたプレゼントを回収したら、こんな有様。
「寮に置いてきた方が良さそうっスね」
「じゃあ、また私先に帰っていようかな?」
それは、去年と同じ。
去年も、みわは先に帰って色々準備をしてくれていた。
多分、その方がずっと効率はいいんだろう。
でも……
「みわ、今日は待っててくれない?」
でも、何故だか今日は少しも離れたくない。
相変わらずの男子寮の人の出入り管理の杜撰さ。
いや、しっかりされるとそれはそれで困るから、是非このままでいて欲しいんスけどね。
オレのワガママで、みわをすっかり無断侵入の常習犯にしてしまっている。
「着替えるからちょっと待って貰える?
テキトーに座ってていいっスよ」
「うん」
みわは、オレがさっき部室で開けたプレゼントの包装紙を一所懸命畳んでくれている。
次から次へと開けたもんだから、ついそのままクシャクシャと袋に突っ込んだままにしてしまっていた。
制服を脱いで上半身裸のままハンガーに掛けていると、みわと目が合った。
「あっ、ご、ごめんなさい」
耳まで真っ赤にして俯く姿に、こっちまでドキリとする。
「いいんスよ、どんだけでも見て。
みわのだから」
なんでこの子はいつまでも免疫が出来ないのか……ダイタンな時はあんなに……。
ふとキスがしたくなってみわに近づく。
頬に両手を添えると、顔を赤く染めたみわが驚いたように目を見開いて……そっと目を瞑った。
それがなんとも言えずに可愛くて。
しかしまた、何故だか一瞬躊躇ってしまい、深くまで味わおうと重ねた唇をすぐに離してしまった。
なんだか、今日は変だ。
「……すぐ着替えるから、待ってて」
少し物足りなそうに眉を下げるみわに背を向け、急いで着替えを済ませた。