第69章 偽り
「んー……あった」
涼太のスマートフォンを覗き込んでみると、表のようなものが表示されている。
「さっきの、業者のリストってやつ?」
「そう。で、コレがスズサンから貰った名刺の画像。ほら、ここに名前がある」
「ほんとだ……」
そして、その業者の数の多さに更に驚いた。
こんなに……。
涼太はサッと画面を切り替えてメールを起動させ、驚くべき速さで文章を打ち込んでいく。
詐欺業者だから絶対に連絡は取らないように、と簡潔に記して送信ボタンを押した。
「ん、これで今日のところはいいかな」
涼太はポン、とスマートフォンを枕元に放り、覗き込むように顔を寄せてきた。
長い指が、私の眉間に触れる。
「みわ、眉間にシワ。心配?」
「うん……」
「大丈夫っスよ、ちゃんと法律家に任せれば。
スズサンとこは金持ちだし、問題ないっしょ」
「スズさんって、お金持ちなんだ……。
よく知ってるね、涼太」
「あぁ、前に聞いただけ。……妬ける?」
切れ長の瞳と薄く整った唇が、柔らかく弧を描く。
「べ、別に……」
「ふぅん」
涼太は横目でチラリとこちらを見ながらそう言って、髪をかきあげた。
何気ない仕草ひとつに、目を奪われる。
その妖艶な姿につい見惚れてしまった。
「涼太、髪……伸びたね」
2年生の夏にバッサリ切って以来、短くする事はなく、伸ばしていたみたい。
「あぁ、冬は寒いかなと思って伸ばしてたんスけどね。また切るかなぁ」
ちょん、と前髪をつまんで上目遣いをする姿がなんだか可愛らしい。
思わず手を伸ばしてそのサラサラの髪を撫でると、ネコのように気持ち良さそうに目を細めた。
「……みわの手、気持ちい」
触っている私の方が……
絹のような手触りが気持ち良い。
涼太はポスンと枕に頭を預けたと思ったら、私に近寄って来て、また胸を枕にしだした。
「こっ、こら……!」
「ん〜……」
涼太が気持ち良さそうに目を瞑って……甘えた声を出しているのが可愛くて、暫く頭を撫で続けていると、やがて小さく寝息を立て始めた。