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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第69章 偽り


壁際に立てかけてあるのは、涼太と写っている香水の広告写真。

涼太が貰ってきてくれたボードを、安物だけどUV加工がされている額に入れて、飾っている。

「モデルやってる時のみわ、キレイだったっスね……」

もう、あの時のことは恥ずかしすぎてあまり思い出したくない。

「あ、モデルって言えば……スズさんがモデルにスカウトされたんだって」

「……へえ、スカウト? どこで?」

「んー、横浜って言ってたけど……あんまり詳しくは聞いてなくて」

「それ、大丈夫っスかね?」

涼太が怪訝そうな顔をしている。
その反応は、意外だった。

「大丈夫って、何が?」

「いや、今多いらしいから……スカウト詐欺」

「……へ?」

「知らないんスか? テレビでも結構やってるけど……」

「なに、なにそれ」

「いや、偽スカウトマンに捕まって、事務所所属させるって言って高額の契約料取られたり、AVに出演させられたり、とか……」

「ええ!?」

そんなの、全然知らなかった……!
私、気楽に凄いね、なんて言っちゃって……

「今日事務所に行くって言ってたけど、大丈夫かな……」

「いやまあ、ニセモノとは決めつけらんねえっスけど……変なのに捕まってないといいけどね」

「ちょっと私、電話してみる……」

枕元に放り投げられた鞄から、まだ震える手でスマートフォンを取り出し、スズさんに電話をかけた。

『はい、神崎先輩ですか?』

良かった、声は元気そう。

「スズさん、もう帰ってきた?
モデルの事務所って、大丈夫だった?」

『もう帰って来ましたよ。
今日は宣材写真と契約の説明だけだったし』

「洗剤?」

『あ、すみません、ちょっと事務所から電話がかかってくる予定なので……』

「あ、忙しいのにごめんね、またかけるね」

『失礼しまーす』

「……」

「スズサン、なんだって?」

「ん、なんか、洗剤の写真を撮ったって……」

どういう意味だろう?

「宣材写真? このタイミングで?」

あ、涼太には通じてる。

「……なんか、胡散臭いっスね……」

涼太もいつの間にかスマートフォンを片手に持ち、電話をかけ出した。


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