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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第69章 偽り


「神崎先輩! 聞いて下さいよー!」

女子更衣室のロッカー前で楽しそうに話し掛けてきたのは、今年2年生になった後輩マネージャーのスズさん。

「どうしたの?」

「私昨日、横浜でスカウトされちゃって!」

スズさんは、とっても可愛い。
試合会場でも写真をお願いされたり、まるで芸能人みたいだ。

「そうなの? すごいね!」

「これで私も黄瀬先輩と並べるモデルデビューですよ!」

「スズさん可愛いから、すぐに人気になっちゃうね」

「黄瀬先輩を取られても、文句言わないで下さいね、先輩!」

「が、頑張るよ……」

「それじゃあ私、今から事務所で打ち合わせなんで! お先に失礼しまーす!」

「気をつけてね」

スズさんは足取り軽やかに去って行った。
なんだか凄く楽しそう。



私も着替えを済ませて更衣室を出ると、ドアの前に人だかりが出来ていた。

「黄瀬先輩! これ、食べて下さい!」
「黄瀬先輩、写真いいですか?」
「黄瀬先輩!」
「リョータ、これ見て!」
「リョータリョータ!」

相変わらず、彼の人気は物凄い。
そう、言葉通り、物凄いのだ。とにかく。


「あ、みわ、お疲れ」

そんな人だかりなんてまるでなかったかのように、私に向けられる言葉と笑顔。

「ごめんね、オレもう行くから」

人垣をするりと抜け、私の手を取った。

女性陣から向けられる敵意の眼差しと、ボソボソと聞こえてくる陰口。

これも、いつものこと。
ちくちくと胸を刺すような痛みには気付かないフリをした。



「もう来月にはインターハイ予選か、なんか早いっスね」

「本当だね、あっという間」

2人でこうして手を繋いで歩くのにも、慣れてきた。

気づけば私の右側には、いつも彼が居てくれる。

顔を上げると、サラリとした髪に小さなリングピアス。

「涼太は、相変わらず人気者だね」

「ん? そう?」

そう、彼にとってあの光景は日常茶飯事。

だから……こんな風に思うこと自体、意味のない事なんだ。


「みわが妬いてくれるから、もっとリョータリョータ騒いでくれてもいいんスけどね」

「なっ……なにそれ」

思わず顔に熱が集まる。

「みわ、今日家に寄らせて貰ってもイイ?」

その目には、いつも見透かされてしまう。


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