第69章 偽り
また、別れの季節がやってきた。
平年より気温が高かった今年は、入学式の時期に満開になるはずの桜が卒業式に満開になっていた。
また、3年生のセンパイ方は卒業していく。
早川センパイのコサージュはオレが、中村センパイのコサージュはみわがつけた。
中村センパイは小堀センパイとは違い、みわに想いを告げずに卒業していった。
多分センパイは、オレがセンパイの気持ちを知っていた事すら気付いていないだろう。
たまたま見かけてしまった。
朝一番に体育館に来てシュート練習をしていた中村センパイ。
その日はたまたまオレも早く来ていて。
センパイが、体育館に置き忘れていたタオルに優しくキスをし、愛しそうに抱きしめていたのを見てしまったのだ。
それは、みわのタオルだった。
「センパイ、2年間ありがとうございました。
ご卒業、おめでとうございます!!」
鼻を真っ赤にして目を腫らしながらの挨拶。
やはり、何度経験しても別れというのは好きじゃない。
しかし、別れはもう新しいスタート。
海常高校 男子バスケットボール部
主将 黄瀬涼太
狙うは全国制覇のみ。
何度も繰り返す季節。
春は別れの季節だ。
そして同時にやってくる、出会いの季節。