第69章 偽り
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サカキ チハル 様
先日はありがとうございました。
神崎 みわです。
祖母と話をする事ができました。
やはり、過去の事を私が
忘れてしまっていたようです。
過去の事をお話して欲しいと
お願いしておりましたが、
その必要があるか、今暫く
考え直してみようと思います。
気持ちが決まったら、
また相談させてください。
勝手ばかりで申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
神崎 みわ
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そう簡潔にメールを送って、ふうと息をついた。
突然の展開に驚いてしまったけれど、知らないままでいるよりも、ずっと良かった。
……それと同時に胸に湧いた気持ち。
"偽りの家族"と思わず脳裏に浮かべてしまったこの気持ち。
いつか、うまく消化できますように。
不思議に思っていた。
いつも私を助けてくれるおばあちゃんの金銭的な余裕に。
お母さんからお金を預かっているものと思っていたけれど、私立の高校に入る費用から1人暮らしの家賃・生活費の援助。
更に私生活では好きなものを買いなさいとお小遣いをくれたり、スマートフォンをキャッシュで買ってくれたり。
資産家のおじいちゃんの、遺産。
おばあちゃんにとって、愛する人が遺してくれた大切なものを私に使ってくれていたんだ。
そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
高校を出たら、奨学金制度を使って大学に入って、バイトしながら勉強しよう。
おばあちゃんに少しでもお金を返そう。
そして、金銭的にも精神的にも自立して……家を出よう。
ひとりで生きよう。
そう心に決めた。
もう、春が訪れようとしていた。