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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第69章 偽り


「……やっぱり、ショックだった?」

「最初……おばあちゃんが嘘をついてるかも、と思った時は正直に言って……ショックだった」

くしゃりと、涼太の大きな手が私の頭を撫でた。

缶で温まった指先が、まるで慰めるかのように包んでくれる。

「でも、おばあちゃんは私を騙していたわけじゃないから……そこは分かっているから」

「……うん、そうっスね」

「そもそも私、家族ってよく分かってないから……家族っていうものに価値を感じてないから……だからちゃんと受け止められたっていうのもあると思う。心配かけてごめんね」

そう。
大丈夫。

分かってる。

なのに、胸にぽっかりと穴が開いたようなこの感覚はなんだろう?

「無理に、受け止めなくてもいいんスよ」

涼太から出た意外な言葉に、思考が一瞬止まる。

「……え……?」

受け止めなくて……いい?

「そんなに、カンタンな事じゃないと思うから。
みわがゆっくり考えて、みわなりにゆっくり受け止められればいいと思うっスよ」

ゆっくり……
私なりに……。

そうすれば、この胸の違和感の理由が分かる?

「お祖母さんのために……って思って、自分の気持ち、抑えてない?」

「そんな……抑えてなんて、いない……よ」

でも、こころの中で何かが燻っている。

「いつもイイコでいる必要はないっスよ、みわ」

その言葉が、なんだか無性に胸に沁みて、
気が付いたらぽろりと涙が零れていた。

おばあちゃんは私のおばあちゃんだ。
それは変わらない、ずっと。

分かっているのに、でも、何か大切なものを失ってしまったような気もしていて……。

そう考えてしまう事自体が、いけない事だと思っていて、そんな風に感じてしまう自分も嫌だった。

でも、それでいいのかな。
ゆっくりで、いいのかな。

涼太は、優しく抱き締めてくれた。

そのぬくもりの中でそっと目を瞑ると、涼太の香りに混じって、ココアの香り。

この気持ちの正体は分からないまま。

今は、それでもいい。

そう思えた。
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