第69章 偽り
「……その人は新しいお友達?」
急須の中のお茶を、湯呑みに注ぎ始める。
でも、湯量が全然足りていないよ。
おばあちゃんが酷く動揺しているのを感じる。
「ううん、知り合いの……お母さん。
カウンセリングのお仕事、してるって」
「みわ、お菓子運んでくれる?」
「あ、はい」
おばあちゃんは湯呑みを2つ持って、さっさと居間に戻ってしまう。
やっぱり、話したくない……事なんだよね。
居間に戻り、こたつに足を入れる。
冷え切った足に熱がジンと伝わってきた。
「お茶、あったまるから飲みなさい」
「うん、いただきます」
ほどよい温度で淹れられたお茶を口にする。
苦みが口の中にほわんと広がって、ホッと気持ちが和らいだ。
おばあちゃんが話したくないなら、無理に聞き出すのはやめよう。
そう思ってダメ元で切り出したものの、この避けよう。
自分が想像していたよりも何か事情があるのかもしれない。
私から言い出した癖に、2人の間に流れる空気に耐えられなくなって、お皿に入っているお煎餅を1つかじった。
「その人と、何かお話した?」
この重苦しい状況をどうしようと悩んでいる間に突然話しかけられたので、咄嗟に返事をすることが出来なかった。
「……え? あ、ううん……詳しい事は、今日の所は聞かなかったけど……。
昔の私の事、知っているみたいだったから、これから少しずつ通ってみようかなって」
「……そう、かい」
「あと、おばあちゃんの事……元気かって、聞かれた」
どこまで突っ込んで聞いていいんだろうか。
もう、いっそのこと全部聞いてしまいたい。
でも、おばあちゃんは今までずっと隠していたんだ。
それには絶対理由があるはず。
そこに踏み込んでもいいの?
「みわ」
「……はい」
「みわ、黙っていてごめんね」
「お、ばあちゃん……」
「……みわが成人したら、きちんと受け止められるようになったらちゃんと話そうと思っていたんだけれど」
おばあちゃんはポツリ、ポツリと話し出した。