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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第69章 偽り


「いただきます」

チカゲ母が運んできてくれた紅茶を一口。
荒んだこころが少し癒されるような味。

「ごめんなさいね、ウチの子が迷惑かけてしまったみたいで……」

チカゲ母は小さくぺこりとお辞儀をして、見定めるようにオレ達の顔をひとりひとり確認していく。

「あら、貴方笠松さん?」

「ハイ、そうです」

「いい新入部員が入ってきたって、チカゲが喜んでいたのよ~。バスケは楽しい?」

「ハイ、楽しいです」

「そう。青春ね~いいわぁ~」

心底楽しそうなチカゲ母と、面接官と対峙している受験生のようなセンパイ。

「笠松さんは、お付き合いしている方はいるの?」

「はッ!? い、いません! 今は、バスケの事だけで頭いっぱいなんで……」

「あら、そんな事言ってたらあっという間にお爺さんになっちゃうわよ?
今の内に楽しんでおかなきゃ……」

どうやら笠松センパイの評判は、娘からよく聞いているらしい。

早速外堀埋められそうになってるっスよ、センパイ。

「いや、まだそういうのは早いんで、大丈夫です! なあ黄瀬!」

「オレに振るんスか!?」

チカゲ母の視線がオレに移動する。

「あら……もしかしてキセリョ?」

最近はモデル業を全くしていなかったので、久々の呼び名。

「あ、ハイ」

なんだろう、有名なカウンセラーというだけあって、なんかすべてを見透かされているような眼だ。

「あら~~写真よりも髪が短くなってたからすぐには気付かなかったわぁ。
実物はやっぱり素敵ね~!」

「ど、どもっス」

「どう? うちのチカゲ」

どうやら、チカゲ母的には娘に彼氏が出来ればいいらしい。

しかしもう、チカゲサンはゲロ女としてしか見れない。ゴメンナサイ。

「ハハ……オレ、大事な彼女がいるんで……スミマセン」

そう言って、巻いたバスタオルの裾から手を伸ばし、テーブルの下のみわの細い手を掴んだ。

冷え性の彼女の手は指先が特に冷たくなっている。

そっと包むように触れると、それに応えるように指先が絡み合った。

「ふうん……残念」

そう言って今度はみわに視線を移す。

暫く舐めるように見つめていたと思ったら……目を見開いて驚きの表情を浮かべた。


「貴女……みわちゃん? みわちゃんよね?」

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