第69章 偽り
バスタオルを身体に巻き、半泣きでうなだれるオレ。
よしよしと慰めてくれているみわ。
女子のおうちに……と緊張しているセンパイ。
ソファでグッタリしている酔っ払い。
異様な4人組は、チカゲサンの家の広いリビングで思い思いに過ごしていた。
かなり大きなダイニングテーブルやソファ。その他いかにも高そうな調度品。
恐らくカーテンも輸入品で随分とお金をかけているだろう……けど、今のオレには何にも響いてこない。
この時間から考えても、みわと夕食……なんて、間に合うわけがない。
「酒は飲んでも飲まれるなって名言っスわ…」
黄瀬涼太17歳、ハタチになっても酒は飲み過ぎないと誓います。
ちなみに、おんぶしてる状態からやられたので服は上から下までほぼ全滅。
コートはここに向かう途中にあったクリーニング店に持ち込み、その他の服はみわが洗ってくれた。
……ホントはもう着たくなんかないけど、この時期に裸で帰るわけにもいかない。
今は乾燥待ちという状態である。
「きせくーん……ごめんねぇ……」
「これに懲りたらもう二度と飲み過ぎないようにして欲しいっス……」
やらかした彼女よりもオレが懲りてるんスけど。なぜそうなる。
突然ガチャリと開いたリビングの扉。
うなだれていたオレには足元しか見えないが、サテン地にレースをあしらった上品なスリッパを履いた女性の足が見えた。
「あら? チカゲ、帰っていたの? お友達と一緒?」
顔を上げると、チカゲサンによく似た女性が立っていた。
お姉さんだろうか?
「おがーーさん……きもち、わるい……」
チカゲサンはそう言って再びソファに顔を埋めた。
その高そうなソファで吐くなよ……なんて念を送る。
どうやらお母さんのようだ。
随分と若く見えるけど……。
「まったくチカゲったら、お茶も出さないで。皆さんごめんなさい、ちょっとお待ち下さいね」
そう言ってチカゲ母はリビングを後にした。
この状況に慣れっこな感じなのがコワイ。