• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第69章 偽り


「ええー!? 笠松クンだけでいいよぉ!」

真っ赤な顔をしてゴネるチカゲサン。
真っ青な顔でこちらを見る笠松センパイ。

森山センパイがここにいたら、狂喜しそうな顔だ。

「スンマセン。オレもそっち方面に用があるんで……」

そう言って、幹事が会計をしているのを皆で待っている間に、オレは駅前まで出て来た。

駅前広場でキョロキョロしている長身の女の子。

「みわ! お待たせ!」

みわはオレの姿を見つけると、少し不安げにしていた表情を緩め、ふわりと微笑んだ。

「ごめんね、こっちまで来て貰っちゃって」

「ううん、大丈夫。もう準備は終わって家出たところだったし……」

みわにも状況を説明し、ついて来て貰う事にした。

これなら、解散してすぐにみわと出掛ける事が出来る。




レストランまで戻ると、もう既に会計は終わり、解散した後だった。

レストラン前のベンチにチカゲサンがぐったりと座り込み、それを笠松センパイが心配そうに見下ろしている。

「スンマセンセンパイ、お待たせしました」

「ご無沙汰しております、笠松先輩」

「お、おお、久しぶり。元気そうだな」

見るからにホッとする笠松センパイ。
さっきのみわの姿とダブる。

「んじゃ、行きましょーか。オレ達もこの後約束あるし」

「悪いな、黄瀬、神崎。
……チカゲ先輩、行きますよ」

「ん~、オッケー!」

チカゲサンがベンチから立ち上がり、フラフラと歩き出す。

ふらふら、よろよろ。
よろよろ、…………ふらふら。

少しの間見守っていたが、全く前に進んでいない。

「……相当酔っちゃってるんだね……」

みわも心配そうな顔。

まずい。
このまま酔っ払いの歩調に合わせていたら、この後のみわとの予定も全部潰れてしまう。

「ああもう!
チカゲサン、ホラ、おぶってくっスよ」

笠松センパイに彼女をおんぶするのは到底無理だ。

「ええ~……きせくんがぁ?
も、しょうがないなぁ……」

しょうがないのはアンタだっつーの。

「ごめんね、みわ」

ぼそりとみわに呟くと、彼女は少し眉を下げた笑顔で首を振った。

「仕方ないよ」

その声にいつもの元気はなかった。

/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp