第69章 偽り
「じゃーセンパイ、戻る前にちょっと聞いておきたいんスけど……」
2人して席に戻ると、既に他のメンバー同士で話は盛り上がっているようだった……
が。
「あ、黄瀬君戻ってきた~!」
「お帰り~! どこ行ってたの?」
自分でも怖くなるほどの集客力。
そして怖いセンパイのセンパイ達。
(なんか言葉遊びみたいになってきたっスね)
「黄瀬君は休みの日、何してるの?」
ふわゆるパーマをかけ、薄ピンクのカーデを肩掛けにしたお姉さんが早速話しかけてきた。
「オレは今は部活ばっかなんで、あんま休みってないんスよね。なんかハマってる事、あるんスか?」
……休みの日はみわとデート、とは言えない。
「私は今、あっちこっち旅行行くのが好きかな。
ダイビングとかも結構スキ」
「へえ、そうなんスか、ダイビングと言えば……」
センパイに聞いた、他メンバーの好みなどを思い出しつつ、その内の1人に目線を送る。
「……あ、僕も好きですよ、ダイビング!」
オレは他メンバーの特徴をセンパイから聞き出して、彼らに話を流す事に決めた。
後は彼ら同士でうまくやって貰おう。
「ハイハーイ! もうハタチ超えてるひとー!」
チカゲサンの一声で、オレ・笠松センパイ・他数人以外の手が上がる。
どうやら飲酒モードに入るらしい。
まだ夕食の時間にはほど遠いし、カフェ感覚でスイーツ等を食べているだけだというのに。
ハタチになったばかりで、意味もなく飲酒をしたくなるものなんだろうか。
まだ17の自分には分からない感覚。
テーブルには次から次へとカクテルやビールなどが運ばれ、驚く程のスピードでなくなっていく。
退店時間が訪れた頃には、数人が千鳥足状態になっていた。
チカゲサンも、相当酔っているようだ。
「かーさまつくーーん! 送ってってーー!」
ピンクのバイカラーコートを着る事もせずぶんぶんと振り回して、チカゲサンが笠松センパイに向かってフラフラと寄ってくる。
「……黄瀬……」
オイ、これどうしたらいいんだよとでも言いたそうなセンパイの顔。
「……送ってくっきゃ……ないんじゃないスか……」
オレは肩をがっくり落としてそう告げた。