第69章 偽り
「黄瀬君はおうちどこなの?」
「え、今まだ高校生なんだ! カワイー」
「こんなにイケメンなのに彼女募集中ってこと?」
「背高いね! 黄瀬君も何かスポーツやってるの?」
「雑誌見たよ、前はモデルやってたよね? 最近はやってないの?」
イタリアンレストランにて男女6人ずつの合コンが始まった。
始まった途端、男女それぞれ向かい合わせに座っているのにも関わらず、それも全部無視でオレに質問が殺到している。
それをオレが適当に相手する、合コンはそんな微妙なスタートを切っていた。
「お、おい黄瀬、ちょっと来いよ」
開始早々、オレは笠松センパイにトイレまで引きずり込まれた。
「オマエ! 女子ホイホイか! もっとこう、うまい事かわせねえのかよ!」
「無理言わないで欲しいっス! そりゃモーションかけられたらかわせるけど、あんなんただの質問じゃないスか」
「あああ、先輩方にシバかれる……」
頭を抱えているセンパイの貴重なショット。
だから、そもそも人選ミスだって事に気が付いて欲しいっス、センパイ。
これは普通に想像できた事態。
オレは今日、センパイのドーテー守りに来てるんスから。
「ところでセンパイ、チカゲサンの事はどう思ってるんスか?」
「チカゲ先輩? どうってどういう意味だ」
この質問でこう聞き返されたのは生まれて初めてかもしれない。
「どういう意味もこういう意味もねえっスよ、女性としてどう見てるかってことっス」
「綺麗な人だよな」
「そっスね。で?」
「で? って……どう見てるかって、どういう意味だ」
いつもの真面目で真っ直ぐな瞳。
ダメだ。
センパイ、こんなに重症だとは思ってもいなかった。
「カンタンに言えば、お付き合い出来るかどうかって事っスよ」
「ハア!?」
センパイの顔が真っ赤に染まる。
「ねえよ! あるわけねえだろ! 大体オレは今バスケに必死でそんな事考えたこともねえよ!」
……このドンカンっぷり、さすがにチカゲサンに少し同情する。
いや、彼女はセンパイがこういう男だと知っての事だろう。
彼女の方が何倍も上手だ。
「センパイ、気を付けないと食われるっスよ」
センパイの顔、今度は真っ青になった。
この百面相、みわみたいっスね。