第68章 際会
……今年のウィンターカップ。
海常は、決勝戦で……負けた。
優勝は、秀徳高校だった。
海常は去年のウィンターカップ3位決定戦でも秀徳に敗北を喫している。
チームの総合力としては大差なかった。
しかし、それぞれマッチアップした際に個々の能力の差が出てしまった。
一番大きかったのは、やはりPG……高尾クンのところか。
笠松センパイが抜けた穴は大きい。
いや、そんな事は百も承知だった筈だ。
それを補って余りあるほどの総合力をつけなければならなかった、それだけだ。
持てる力の全てを使い切った。
全員で振り絞った。
後悔は、ない。
でも……また、センパイ達を勝たせてあげられなかった。
表彰式後、その足でレギュラー陣は湘南の海へ向かった。
早川センパイの発案だ。
嗅ぎ慣れた潮の香り。
何かあるとランニングをさせられる砂浜。
夜の海は暗く、普段は陽の光を浴びて輝く水面すらも真っ黒だ。
寄せては返す波の音が、意味もなく不安だけを煽る。
しかし、悔しさに塗れたオレ達にそんな不安すら感じる余裕はなかった。
オレ達はここでひたすら、叫んだ。
叫んで、泣いた。
オレはこのまま、何も成さないで高校でのバスケ生活を終えてしまうのか。
そうはいくか。
来年度は、オレが海常の4番を背負う。
オレの背中に海常の未来を託していった
偉大なるセンパイが背負っていた番号。