第68章 際会
大晦日。
去年末はみわと2人で過ごしたが、今年はお祖母さんと一緒に居てあげたいというみわの希望もあって、別々に過ごしている。
申し訳無さそうにしていたけど、今みわの近くにいるたった1人の肉親だ。
家族と過ごす時間を大事にしたいと思う彼女の気持ちを尊重してあげたい。
そんなみわが好きだから。
オレは1人自室でテレビでも観ながら年越しを迎えようかと思っていたら、うちの女性陣がそれを良しとはしなかった。
「涼太! ほら! 下りて来なさい!」
階段下から呼ばれればなんとなくやり過ごすつもりだったのに、部屋まで迎えに来られてしまっては下りるしかない。
珍しく今年は父も家にいるから余計に、だろう。
……オレは赤司っちから紹介して貰った夏のアメリカ短期留学のチラシを持って階下へ下りていった。
ゆく年くる年を見て除夜の鐘を聞きながら、零時を待つ。
オレはリビングで家族と一緒に居るが、その手にはスマートフォン。
『10、9……』
スピーカーから聞こえる控えめな声。
お祖母さんと一緒にコタツに入っているらしい。
「はち~! な~なぁ~! りょ~たぁ! きいてる~!?」
「聞いてるよ! みわと電話してんの!」
「みわちゃ~ん! またあそびにきてねぇ~!!」
既に父は酔い潰れて寝ており、酒に滅法強い母も姉2人も完全に出来上がっている。
テーブルの上には様々な酒類のビンやら缶やらが置いてあるが、それらは全てカラだった。
オレも成人したらここに参加するのだろうか……と想像を巡らせてみるものの、この惨状を見てそっと思考のフタを閉じた。
「ろく~~! ご~~! れっつご~!!」
……ダメだ、こりゃ。
「ごめんね、こっち騒がしくて」
『ふふ、楽しそう。3、2、1……』
あけまして、おめでとう。
今年も色々あるとは思うけど、
素敵な1年になりますように。