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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第68章 際会


安心する……

この腕に包まれていると、ただそれだけでこれ以上にないくらいの温かい気持ちになる。

どうしてだろう。


きっと、彼の気持ちが私に向けられている事を感じられるからだ。

不特定多数の誰かから向けられたものでもなく、不特定多数の誰かに向けられたものでもない。

彼が、私だけを見て落としてくれる言葉が、行動が嬉しい。



私はこんな凄い人の『特別』じゃなくていい。

そんな大それたものを求めているわけじゃないの。

涼太には、自由で居て欲しい。

私なんかに縛られて欲しくない。

ただ、今だけは独り占めしても……いいよね?



「みわ……考え事?」

髪を撫でてくれている手がピタリと止まった。

「あっ、ごめん……ちょっとだけ」

「まぁた難しい事考えてたんスか?」

「難しい事なんて、考えてないよ。簡単なこと。すっごく、簡単なこと」

「みわのカンタンはオレにとって難しいんスよ」

手が頭頂部からするすると下りて来て、指先で毛先をくるんと巻く。

涼太が好きな髪の触り方。

その触り方も勿論好きだけれど、この時の涼太の表情が優しくて、好き。

今はちょっとふてくされたようにしているその表情が可愛い。

力の入らない身体を精いっぱい起こして、薄く整った唇に触れるだけのキスをした。


恥ずかしくて、ささっと元の位置に原点復帰する。

「……みわ、なに今の、ちょっと」

涼太が驚いたようにこちらを見ている。
……なんかいけない事、した?

今、そんな事しちゃいけない雰囲気だった?

「つ、つい」

「みわ、もっかい」

「え?」

「もっかい、して」

その蕩けるような甘え声は反則だ。
何か、まずい事があっただろうか。

でも、勢いなら出来るけど、さあやってと言われるとハイドウゾとはなかなかいかない。

「ね、みわ」

……もう、だから本当に涼太はズルイんだ。

その声だけで呼び寄せられた私は彼の上半身に少しだけ体重をかけ、再び唇を重ねた。

「……甘い……もっと、ちょうだい」

軽く触れて戻ろうとしたら、大きな手に捕まってしまった。

どんどん深く重なっていく唇。

夢中で、薄く開いた彼の唇の間に舌を滑り込ませた。

どうしよう……

こんなにも……

「涼太……大好き……」

幸せ。


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