第68章 際会
ヒヤッとした感覚が頬を包む。
次に、その感覚が目元へと移動していくのを感じて、涼太が涙を拭ってくれているのだと分かった。
「みわ……」
ぽそりと呟く声が聞こえる。
心配させているのは、私なのに。
覚醒しつつある意識に従って目をゆっくり開けると、目の前には愛しい人の姿があった。
「おはよ……りょーた……」
「……ゴメン、暴走しすぎた」
「ううん……」
タオルを持ったその手を捕まえて、頬ずりをする。
あったかい。
「……オレいつか、マジでみわのこと殺しちゃうかも……」
はたから聞いたら物凄く物騒な事を言っている筈なのに、涼太が言うと不思議と少しも怖くない。
「……カンタンには死なないもん、私」
笑顔を返すと、少しだけ安心したような顔。
「カラダ、動く?」
そう言われてみると、下半身の感覚が鈍い。
足を動かすと、驚くことにまだ快感の余韻が走った。
「ちゃんと動く、だいじょぶ……」
のそのそと起き上がると、力の入りきらない身体を涼太が受け止めてくれた。
時々、涼太はこうやって自分の欲を暴走させる。
でも、それを受け止められるのが嬉しい。
これって、代わりのきかないもののような気がして。
「……半分くらいお返し出来た気分っス」
「は、半分!?」
さっきはああ言ったけれど、されてる時は死ぬかと思ったのに……。
もう、あれ以上は無理。
真面目に、発狂しそう。
「目隠しも売ってたけど、流石にね……」
涼太がまた危険な自販機を覗き込んでいる。
目隠し……。
彼が見えていないと行為が出来ない私にとって、それは恐怖の対象だ。
ちゃんとそれを分かっていてくれてる。
涼太は、全然意地悪じゃない。
いつも私の事を考えてくれる……優しいひと。
「ああ、でも手錠で繋がれて動けずにされるがままのみわ……最高だったっスわ……」
涼太はうっとりとした表情。
……やっぱり、イジワルな人かも。