第14章 花火
「ご馳走さまでした!」
「お粗末さまでした」
丁寧にお皿を下げてくれる黄瀬くん。
「あ、ありがとう。後は洗っておくからもう大丈夫だよ、ほんとに!」
「じゃあお言葉に甘えて。アリガト!」
「今日は一日、ありがとう。昨日の夜から沢山時間貰っちゃった」
「楽しかったっスよ! 花火もできたしみわっちのエロい顔も見れたし」
「うっ」
黄瀬くんはニッコリ微笑んで、私の頬を指でつついた。
快感を思い出して、心臓の鼓動が速くなる。
まだ、あの感じは鮮明に覚えている。
下半身が疼いているのに気がついた。
「ハハ、冗談っスよ。じゃあオレ今日は帰るね」
「うん……」
「……みわっち、花火の"お願い"今言ってもいいっスか?」
「うん。いいよ。なんでも」
黄瀬くんに優しく抱き締められて、驚いて顔を上げると、近付いてくる顔。
……そのまま、キスをした。
舌は絡めない、優しい愛撫のようなキス。
黄瀬くんの香りに包まれて、気持ちいい。
唇だけが触れているはずなのに、背筋がぞくぞくしてくる。
「……オレのことずっと、好きでいて……」
「……え」
ようやく聞き取れるような、小さな声。
少し震えた声。
控えめに言ったその言葉に、胸が締め付けられる。
「うん……黄瀬くんが嫌だって言っても、ずっと好きだよ……」
大きな身体を抱き締め返した。
今日、その背中はとても小さく感じた。
黄瀬くんが帰ってから、片付けを終えてシャワーを浴びた。
スマホを確認すると、黒子くんからのメールだった。
内容はなんてことのない、日常的な話題。
返信メールを作成する。
"黄瀬くんって、昔からあんなに
寂しがりやさんなのかな?"
黒子くんだって、唐突にこんなこと聞かれたら驚くかもしれない。
それでもなんとなく気になって、黒子くんなら、何か手がかりになるような事を知っているかと、メールを送信した。
スマホがすぐに受信を知らせる。
"正直、詳しい事は分かりません。
束縛されるのは嫌いと言っていましたが……
でも、彼は面倒臭いところがあるので
言葉通りには受け取らない方が
良いかもしれません。"
……分かるようで……分からない……!
束縛されるのが、嫌い、かあ……。
そうなんだ……知らなかった……。