第3章 海常高校
家に帰ってからシャワーを浴び、無事に乾いたタオルを持って、昨日よりも1時間以上早く駅に向かう。
学校の近くに引っ越しできるのが一番だけど、今の自分に出来ることといったらこのくらいだ。
昨日の時間帯よりも格段に人は少ないけれど、少し気分が悪くなって、1本見送った後に来た電車に乗車した。
駅に到着し、ホームを歩いていると、後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
「神崎っち、オハヨ! また会ったっスね」
黄瀬くんだった。
「あ、おはよう……これ……借りてたタオル。ありがとう」
「いいって言ったのに」
「ううん、そういうわけにはいかないよ。本当に助かりました、ありがとう」
「ん、じゃあ受け取っておくっス。今日は随分早い時間だけど、まだ……怖いっスか?」
「うん……やっぱりちょっと……あの、早く行って予習でもしておこうかなって。黄瀬くんは?」
「オレは朝練。あ、そういえば昨日、体育館に見に来てくれてたんスよね?」
「あ、うん、ちょうど通りかかって」
「声かけてくれれば良かったのに!」
「ううん、遊びじゃなく、あんなに真剣にやってる皆の姿見て、とても声なんてかけられないよ」
私はあははと軽く笑い飛ばしたけど、黄瀬くんは少し驚いたような顔をした。
「……練習、どうだったっスか? オレ、カッコよかったでしょ」
わ、こんなことサラッと言っちゃうし。
流石というか……でも、気になってた事があって。
「……足元がもっと、安定した方がいいかも」
「え?」
「バスケの事、全然知らないくせに言っちゃって申し訳ないのだけど、時々重心が安定してないように見える時があって……」
「神崎っち、スポーツやってたんスか?」
「あー……中学でテニスやってたってだけで……運動音痴だから勿論団体戦レギュラーなんて夢のまた夢ってレベルだったんだけど。その代わりに選手を観察するのは得意になったのかも……」
「そうだったんスね。ちょっとビックリしたっス」
「ごめんね、無駄話して」
っていうか私、「カッコよかった?」の問いに
全く違う方向から返事した気が……
「ううん、サンキュー。良ければまた見に来て欲しいっス!」
……私、なんか、ファンの1人みたいな感じになってる?