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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第3章 海常高校


電車に乗って帰路につく。

幸いにも、朝のような混雑ではなく、なんとか乗車することができた。

それに、彼に借りたタオルも力を貸してくれているようだった。

(返さなくていい、って言ってくれたけど、返さない理由がないよね……)

家に帰り着いたあと、荷物を置くなり洗面所へ駆け込み、借りたタオルを手洗いで洗濯した。

きっと明日には乾いているだろう。




翌日。

私は、迷っていた。

少しでも自分を変えようと、苦手な分野を克服しようと始めた朝のランニング。

昨日あんなことがあって、もしかしてランニング中に痴漢野郎がいたらどうしよう……などと考えてしまって。
そんな事、あるわけないのに。

でも……少ししてから考えるのをやめた。
痴漢のせいで、日常を変えるということは、それだけあの一件を意識・記憶しているということだ。

私は、あんなことに負けたりしない。
大丈夫。

着替えて、いつもと同じ位の時間に出発。

アパートを出ると、いつも会う男の子がちょうど走ってくるところだった。

いつものように、綺麗な髪を靡かせて……

……え?
あれ……
あれは、黄瀬くん?

「あ、神崎っち。おはようっス」

「お、おはよう」

え、もしかして毎朝背中を見ていたのは黄瀬くんだった?

「神崎っちも、毎朝頑張ってるっスよね。勉強も運動も出来ちゃうなんてすごいっスね!」

彼の発言からして、気づいていなかったのは私だけ?
思えば、いつも逆光だし、シルエットくらいでしか判断してなかった気も。

「ううん、運動は苦手。少し体力でもつけなきゃと思って」

「そっか、偉いっスね。じゃあ、お先に!」

「うん、またね」

そう言って走り去っていく足取りは軽快だった。

昨日、ギャラリーの女の子が話してたけど、彼はモデルもやっているらしい。

道理で、芸能人オーラが出てると思った……
男性恐怖症の私、普段からそういう情報にはてんで疎い。

なんでも出来ちゃう人って、いるんだな……
いいな……。

何もない私。
沢山のものを手にしている彼に嫉妬しているのかもしれなかった。



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