第68章 際会
みわをバスルームへ引きずり込み、お湯を張り直してる間に風俗ごっこをし(オレが洗う方だから表現としては正しくないのかもしんないけど)、またバスタブに2人で浸かっている。
「……透明だよね」
調光で染まったように見えるお湯を掬っては、がっかりしたように流す。
黄色に変わった時には特に躍起になってやってるのが可愛いんだけど……
「……透明っスね」
まあ、何度やっても透明だ。
オレは魔術師じゃないから流石に色は変えてあげらんない。
「そんなにオレを捕まえたいの?」
抱き締めるように彼女の身体に触れていた掌で、乳房をそっと包んだ。
「んっ……だ、だめ?」
「ダメじゃないっスよ? ただ、ホンモノが後ろにいるのに寂しいなあって」
両手ともに柔らかい双丘をやわやわと揉みしだくと、先端が硬度を増してゆき、微かな吐息のような喘ぎ声が漏れた。
「そうだみわ、今日どうだったんスか?
桃っちと行って来たんスよね、木吉サンとこ」
「うん、リハビリセンター……凄かった。
こんな陳腐な言葉でしか表せないのが悲しいけど、とにかく凄かったの。
皆、プロなんて言葉で纏められないほどのプロだった」
「へえ、みわがそんな風に言うの珍しいっスね」
「今までもぼんやり、何かスポーツ選手の役に立つような事を……とか思ったりしてたけれど、今は理学療法士の事、調べてみようかなと思ってる」
「理学療法士、っスか」
オレも、確か怪我をした時にお世話になったな。
「辛い思いをしている人の、助けになりたいって気持ちも、出てきちゃって……」
みわという女性からは、この細い身体では想像つかないくらいの生命力を感じることがある。
「……私、人間について、もっと知りたい。
人体の……人間の"専門家"になりたい」
そう言ったみわの目は今までにないほど澄んでいて、美しかった。