第68章 際会
暫くの間、言葉もなく抱き合っていた。
2人の熱で温度の上がった部屋は蒸し暑く、触れ合っている部分が汗で湿っていく。
触れ合った胸から、トクントクンとみわの鼓動が伝わってくる。
彼女の全てが愛おしくて、どうにかなりそうだ。
みわの過去は……オレは気にしないと言ったけど、正直……怖い。
みわが、それを思い出す事でまた傷つくのではないかと思うと、ゾッとする。
誰よりも幸せになって欲しいのに。
幸せにしてあげたいのに。
いつも思う。
自分はなんて非力なのかと。
地位や名誉があるわけではない。
財力があるわけでもない。
精神的にも未熟だし、何よりまだコドモだ。
それなのに身体は一丁前に仕上がっていて、
セックスだけはしっかりヤってる。
こんな男でガッカリしないだろうか?
いつも思っている事だ。
本当の意味で彼女を支えられる男になりたい。
……何度も思う。早く、オトナになりたい。
「けほ、げほッ」
みわが突然むせて、肩を激しく揺らした。
「みわ、水」
口移しで飲ませてあげたいけれど、絶えずコンコンと咳をしているのが可哀想で、すぐに枕元のペットボトルを渡した。
「ごめんね、いきなりむせちゃった」
「大丈夫? それだけ? 風邪引いちゃったっスかね……」
「ううん、ホントに一時的なものだから……って、え……もう、朝!?」
時計を見ると、時刻は午前4時になっていた。
「昼前まで少し眠る?」
珍しく、今日は終わった後眠くなさそうだ。
……オレがあんなに早く果てたからか……。
「えっ、今日も練習……あ」
「今日は午後からっスよ」
「そっか……」
みわがむくりと起き上がった。
張りのある上向きの乳房が眩しい。
「あっ……み、見た!?」
慌てて隠すその姿が余計にエロくて。
誘ってんスか、マジで。
「うん。見た。ガン見した」
「やだ、もう! えっち!」
……だからね。
ここはラブホテルで……数十分前まではオレたち繋がってて……って言っても無駄か。
「もっかい汗流そ、みわ」
「えっ、ちょっ」
若干抵抗する声を後頭部に浴びながら、バスルームへ連行した。