第68章 際会
「でも、こっちの電車が遅れたら乗り換え電車だって待ってくれてるんじゃない? 普通!」
その想いも虚しく、乗り換えの改札口に着いた時には既に終電は発車してしまった後だった。
……決して、私の足が遅かった訳ではない……と思いたい。
けれど、私たち(というよりも私)を追い越して素早く駆け抜けていったサラリーマンのお兄さんがいないところを見ると、やっぱり涼太1人だったら間に合っていたんだろう……。
「……はぁ、はぁ……ごめんなさい」
それでも限界まで走ったのに。
もはや私は肩で息をしている状態で、酸欠の全身汗だくだ。
涼太も汗をかいてはいるけれど、息は殆ど切れていない。
きっと心肺機能の差も天と地ほどにあるんだろう。
「んじゃ、タクシーっスかね」
うっ。
「……タクシーって、いくらくらいかかるのかな」
「ん? 2万もしないと思うっスよ」
に
「にまん!?」
ダメだ。
そんなの絶対無理。
「他に、何か方法……」
歩く、のは無理だしバス……だって終わってるに決まってる……。
ヒッチハイク!
だめだ、落ち着いて。
「いやー……安く済ませるならホテルとか漫画喫茶とかっスかね……ファミレスで朝まで、とか言ったら明日がキツそう」
「漫画喫茶……って行った事ないけど、そんなに安いの?」
「今は超激安! ってわけでもないけど、シャワーがあったり食事があったりで結構快適みたいっスよ」
「へえ……すごい」
「あ、でもやめとこ。この辺りの漫画喫茶は痴漢が多いってテレビでやってたっスわ」
痴漢。
その言葉に背筋がゾゾッとした。
「じゃ、ホテルで寝てこっか」
「え……ホテルって……」
「ん? この辺りだと駅の向こう側のラブホ」
「だ、だから年齢が」
「んー……でも、他に方法ないし……」
「…………」
元はと言えばこの状況は1から10まで私の責任だ。
「……わ、分かった。いこ」
まさかの、ラブホテル……。