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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第14章 花火


あれから、何事もなかったように時間が過ぎていった。

普段なら気づかない程度だけど、なんとなく空気がギクシャクしている感じがする。

手持ちの花火は底を尽き、残りは2本のみとなっていた。

「あ、黄瀬くん、最後の1本だ」

「……競争しよっか」


パチパチという小さな音が響く。

丸い芯の周りに不規則に飛び散る模様が、美しい。
終わらなければいいのにな……

終わらないで。

ずっと、このままで……。

「あっ」

願いも虚しく、私の花火が先に終わってしまった。

「あー……終わっちゃった……」

「へへ、今度はオレの勝ちっスね」

「残念。なんでも言うこと聞きます、王様」

「う〜ん……じゃあ帰り道で考えるっスわ」

珍しい。自分が言い出しっぺだし、さぞかし黄瀬くんらしいお願いがすんなり出てくると思ったのに……。

さっきの、黒子くんの話からだ。
ちょっと空気がおかしくなったの。

なんかまた機嫌を損ねるような事、言っちゃったかな……。

メールがそんなに嫌だったのかな。
でも、悪いことしてるわけじゃないし。
黄瀬くんが何考えてるか、分かんない。

花火を片付けて、帰路に着く。
黄瀬くんが、また電車に乗ってうちまで送ってくれるって。

「ホント……ごめんね、遠いのに。そうだ、お引っ越し、手伝うね」

「アリガト。ま、オレ荷物ゼンゼンないからすぐ終わっちゃうと思うけど」

「家電とかはどうするの?」

「あー、仕事繋がりの人でもう使ってないのくれるっていうから、貰う事にしたんス」

「……そっかあ……なんか、仕事とか、すごいなあ」

「みわっちも整体院行く時はバイト代貰ってるんスよね?」

「うん、診療時間内でお手伝いする時は少し貰ったりしてるけど、基本は夜間教わるのがメインだから、殆どお給料としては貰ってないかな」

「そうなんスね。みわっち、いっつも頑張ってるっスもんね」

「黄瀬くんは、どこでも黄瀬くんしか出来ない事をしていて、本当に尊敬する」

「オレにしか……ねぇ……」

そう言って、黄瀬くんは黙り込んでしまった。

「黄瀬くん……?」

「……ハラ、減ったっスね。夕飯どうする?」

「私軽くなんか作ろうか?」

「マジで? やりぃ」

……私の家に着いても、結局"お願い"の話にはならずじまいだった。


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