第14章 花火
「みわっち、自分がして欲しいことを言わなきゃ意味ないんスよ、こーゆーのは」
「あ、そっか、そういうものなんだね。う〜ん……じゃあ手を、握って貰えます……か」
「……コレでいいんスか?」
黄瀬くんの大きい手に包まれる。
骨ばっていて、でも指が長くてキレイで。
「この手、好きなんだ……」
「みわっちはすべすべもちもちっスね。握ってるオレの方が気持ちいい」
「そうかなあ。……ありがとう、もう大丈夫」
「ねえ、この後もひたすら線香花火なんスけど……いいんスか?」
「いいじゃない。花火見ながらゆっくりお喋り、楽しいよ」
「じゃあ、最後の一本でまた競争っスね」
「いいよ、ふふ、私また勝っちゃうかも」
「次は負けねっスよ!」
二人で談笑しながら花火をしていると、私のスマートフォンがポケットの中で震えた。
「みわっち、電話じゃない?」
「ううん、多分メールだと思うから」
「……前にも聞いたっスけど、黒子っちとまだメールのやり取り、してるんスか?」
意外な質問だった。
確かに、4月の終わりか5月の頭だったか、黄瀬くんが風邪で寝込んだ時にその話になった事があった。
いまだに黒子くんとは、ちょくちょくメールしたりしてるんだけど……隠す方が、なんかやましい事がある気がするよね?
「うん、時々だけど、メールするよ」
「……そうなんスか……前に、オレに言えない事聞いたりするって言ってたっスよね」
「あ、……うん……」
黄瀬くん、自分で頭悪いとか勉強嫌いとか暗記無理とか言うけど、全然違うよね。
確かにお勉強は苦手なのかもしれないけれど。
「何聞くんスか?」
「え……えーっと……」
黄瀬くんだよ。黄瀬くんの事、直接本人には聞けないから相談してるの!
なんて言えないんだけど……
「……勉強のこととか?黒子くんて、ほら、物知りだし!」
ちょっと予想が入ってる。
「確かに黒子っちは読書が好きだし……俺より色んな事知ってるし、話してて楽しいかもしんないスね……」
黄瀬くんの声のトーンが……。
あれ、なんだかおかしな方向に向かってる?
「オレ……みわっちと同じレベルで話できないっスもんね……」
「お、同じレベルって何?」
「……なんでもないっスわ」
いつもの笑顔で隠されてしまった。