第68章 際会
さつきちゃんとは、途中の乗り換え駅までは一緒だ。
「みわちゃんは卒業後、進学するの?」
卒業後、かあ……
「ん、まだそれも未定……」
「そっかあ」
これ以上おばあちゃんに迷惑は掛けられない。
もし進学するとしても、奨学金制度があるところを調べて……。
勉強が出来ることだけが私の取り柄なんだ。
こういう時に活かさなくてどうするの。
それに……今日見てきたような事も、学んでみたい。
家に帰ったら少し調べてみよう……。
でも今日は早く寝ないといけないな。
乗り換えがうまくいけば日が変わる前に帰り着けるはずだけど……。
また明日から練習だし。
乗り換え駅を再度確認する為にスマートフォンを開くと、涼太からのメッセージが1件受信されていた。
「きーちゃん?」
さつきちゃんが突然そう言うものだから、焦ってスマートフォンを取り落としそうになった。
「え、ど、どうして?」
「いや、口もとがにやけてたからそうかなって……」
「え、私にやけてた!?」
全く無意識でのその反応が恥ずかしすぎる。
口が緩まないように片手を添えながら、画面を開いた。
"みわ、おつかれ(*^^*)
もう帰って来た?"
……うっ。
ここは嘘ついても仕方ない。
素直に答えよう。
"練習お疲れ様!
まだ電車乗ったばかりなんだ(>_<)"
頑張って顔文字をつけてみてるんだけど、こんなんでいいのかなあ……。
涼太は既読になってから返信がとにかく早い。
操作スピードが違い過ぎる……。
"じゃあ途中まで迎えに行くね"
あっ、やばい。
涼太のメッセージから顔文字とか句読点が消えるのは大体移動中だ。
これ、急いで家を出たんじゃないの。
"大丈夫だよ! 心配いりません!
電車に乗ってるだけだから!!"
夜道を歩くわけでもないし、座ってれば着くんだから、大丈夫なのに……!
わざわざ時間かけてお金を使って、涼太になんにもメリットないんだから……。
過保護すぎるよー!
「みわちゃん、百面相」
「えっ」
「なんか表情豊かになったね、みわちゃん。
きーちゃんってスゴイなぁ」
しみじみとそう言われ、顔が熱くなるのを感じた。