第68章 際会
「わ、もうこんな時間! みわちゃん、大丈夫?!」
帰るのが遅くならないようにと早めの夕食のつもりで2人でファミレスに入ったのに、気づけば20時を過ぎていた。
「うん、大丈夫。おばあちゃんには連絡しておくから。急いで帰らなきゃだね」
以前よりもだいぶ慣れた手つきでおばあちゃんにメールを送った。
涼太と時々メッセージを送り合うようになってから、スマートフォンの操作にも詳しくなった気がする。
それでも、涼太の高速操作にはまだまだ遠く及ばないな……。
ガラケーでも十分だと言ったのに、お友達と話が合った方がいいからとおばあちゃんが買ってくれたスマートフォン。
私が1人暮らしする気があるなら、と引っ越し費用なども全部出してくれた。
もうお仕事もしていないおばあちゃんの、どこにそんな余裕があるんだろう。
甘えてばかりいられない。恩返しするんだ。
……ちゃんとしたところでリハビリしたら、おばあちゃんも杖を使わずに元通り歩けるようになるんだろうか……。
「みわちゃんのおうち、ここから3時間くらいかかるんじゃなかったっけ? きーちゃんに途中まで迎えに来て貰ったら?」
「流石にそんなに遅くなるのに涼太に迷惑かけられないよ」
「みわちゃ……」
さつきちゃんがそこまで言いかけると、机の上に置いてあった彼女のスマートフォンが物凄い勢いで振動しだした。
「もしもし? え? うん、まだみわちゃんと一緒。まだここから2時間近くかかるよ? え? ……あ、うん……分かった」
少し照れたような困ったような表情でスマートフォンを操作すると、カバンの中にしまってしまった。
「もー……」
「青峰さん?」
「なんで分かるの? 大ちゃん、迎えに行くってきかないんだもん……」
やっぱり2人、イイ感じ。
さつきちゃんは自分の事になると鈍感なんだから……。
「青峰さんを待たせちゃいけないね。帰ろ!」
「ねえ、みわちゃんもきーちゃんに」
「大丈夫だよ! ありがとうさつきちゃん」
「もー……」
(みわちゃんは、本当に自分の事になると鈍感なんだからー!)