第68章 際会
「みわちゃん、お疲れ!
今日はなんだか凄い体験したね〜!
私、あんなに設備が整ってる所、初めて見たかも……」
「……」
「みわちゃん?」
「あっ、う、うん、何?」
ようやくさつきちゃんの声が耳に届いて来て、私は慌てて返事をした。
「大丈夫? みわちゃん、リハビリとかで色々教えて貰って疲れちゃった?」
「ううん……大丈夫」
あのスタッフさんに教えて貰った事。
ヒトの身体は、全て繋がっているという事。
……それはとても当たり前なんだけれど、ああやって全てを理解した上で言うのと私がそう言うのとでは、わけが違う。
どれかひとつだけでは意味がない。
骨、神経、筋肉、皮膚……いや、もっと言うなら臓器や血液まで、全て揃って初めて機能するものなんだ。
更に、肉体を動かすための『こころ』の維持。
それを全て把握した上で、コントロールする。
それも、自分ではなく、他人のものを。
それは途方も無いような事に思えた。
涼太が去年、オーバーワークで足を故障した時。
普段だって、調子が悪い部位がある選手はごまんといる。
今まで、私はマッサージやテーピングしかする事が出来なかった。
それだって、色々勉強したりはしているけれど……。
でも、違う。
もっと出来ることがあるはずだ。
もっと知るべきことがあるはず。
もっと極めたい。
もっと「人間」を知りたい。
そんな気持ちが自分のこころの中に湧き出している事に気付き始めていた。
チームだって同じ。
全員が機能して、初めてチームとして成り立つんだ。
私は、本当の意味で人を陰で支えられる存在になりたい。