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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第14章 花火


「花火なんて久しぶり! どれからやる?」

おばあちゃんとやった記憶しかないけど……。

「オレこれ! なんかみわっちっぽい色だし」

黄瀬くんが取ったのは、パステルカラーで様々な色の持ち手の線香花火。

私は、黄色と青の持ち手の線香花火にした。

「私これ、『海常の黄瀬』って感じ」

「でも、なんつーか線香花火はボトッと落ちちゃうから縁起悪いっスね……」

「そうかなぁ。人間はいつか必ず死ぬし、生きている間に美しく輝けるならいいんじゃないかなって思うよ」

「なんか哲学的っスね。オレ、難しい事はわかんねっスけど」

「大丈夫。黄瀬くんは、黄瀬涼太は落ちないよ」

「……そっス……かね……」

黄瀬くんは、何がそんなに不安なんだろう。

私と違って、なんでも持ってるしなんでもできる。誰からも必要とされている。

でも、核心を突くような事を聞けない。
なんか、そこは聞いちゃいけないラインのような、そんな気がする。


……私は、少しは強くなれているんだろうか。

黄瀬くんとは肌を合わせる事ができるけど、相変わらず電車は怖いし、バスケ部以外の男子となんて、ロクに話ができないままだ。

……一歩ずつ、進んでいかなきゃ……

「どっちのが長いか、競争しねっスか?」

「ふふ、いいよ。勝ったら何かあるの?」

「う〜ん、相手のお願いいっこ聞くとか?」

「わかった。頑張れ黄瀬くん花火!」

ライターで火をつけて、しばし無言。

暗闇の中で、輝く2つの花火。
キレイだなぁ……

……夏、だなぁ……

「あっ!」

ぽとっ、と黄瀬くんが持っていた花火が、私のものより一足先に終わりを告げた。

「わーい、黄瀬くん花火の勝ち!」

「あれ〜みわっち花火! 途中まで良かったのに!」

「私みたいな根性なし花火を選ぶからいけないのよ黄瀬くん!」

黄瀬くんが負けるわけないんだから。

「なんか違くないっスか!」

「お願いごと、何にしよっかな」

「なんでも聞くっスよ女王様……」

お願いごと、かあ……願い……

「身体、大事にして欲しい」

「うん、気をつけるっス。……で?」

「え、今終わったけど」

「え? いや、そうじゃなくて、コレして欲しいな、とかないんスか!」

「……だから、身体大事にして欲しいな、って思ったから」

あれ私、またズレてる……?

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