第68章 際会
「もしかして、これがIHの時に言ってた特別な試合ってヤツっスか?」
チラシに映る『Jabberwock』の選手達は、写真だというのにそれだけで並の選手とは全く異なる雰囲気を醸し出していた。
「そう。チケット準備できなくてワリーけど」
「皆でテレビ見るから大丈夫っスよ」
「先輩、頑張って下さい!」
こんな風に海外のチームと試合する機会なんて、そうそうないだろう。
そりゃ勿論、センパイ達が予選を勝ち抜けるだけの力があってこそ掴み取ったチャンスなわけだ。
海常で培ったセンパイのバスケが、新しい環境でどのように昇華したのか……。
目の前のセンパイの表情を見ていると、そのワクワクが伝染してくる。
「楽しみにしてるっス!」
そんなワクワクの雰囲気をぶち壊すスマートフォンの振動。
皆の目に触れぬよう机の下で画面を確認すると、チカゲサンからのメッセージだった。
うげ。しつこいタイプか。
"なかなか教えてくれないんだけど、笠松クンってどんな子がタイプなのかなぁ?"
……まさにセンパイこそバスケバカ。
タイプっていうよりそもそも女子に興味があるのだろうか……
「センパイ、話の腰折って申し訳ないんスけど、さっきのマネージャー、仲いいんスか?」
「ん? 別に、普通だけど」
「なんかほら、頼み事した書類とかって結構親密そうな感じが……」
「いや、申請しなきゃならねー用紙貰っただけだしな」
「……そ、そうっスよね……」
笠松センパイもみわも、またオレがヘンな事言い出したとでも言いたげな目線を寄越してくる。
「でも、ほら、すっげぇ美人じゃないスか」
「ああ、綺麗な人だよな。なんか去年の学祭のミスコンで1位だったらしいぞ」
「まあ、確かにあのレベルなら……」
センパイが女の人をキレイって言うなんて、これはもしや脈あり?
「なんか、世話焼くのも好きそうだし、バスケも上手いんなら、話も合いそうでいいっスよね」
「だよな。俺もいつも世話になってるよ」
だあああぁ~そうじゃないっ!!
やっぱりセンパイに色恋のどうこうを聞こうとしたのが間違いだった!
"今はバスケばっかりで、女の子のコト考える余裕はなさそうっスよ"
頼むからこれでカンベンして。
……そしてどこまでもバカなオレは、この時のみわのカオを見ていなかった。