第68章 際会
小堀センパイに促されて観覧席に座ると、体育館の全景がよく見渡せた。
目下ではバスケットボール部が練習している。
向こうの方ではバドミントン部や卓球部が練習しているのが見えた。
「あ、笠松先輩」
「どこどこ」
みわが指さした先には、パス練習をしている笠松センパイが居た。
あのキレのいいパスは健在だ。
でも、それにしても内容が基礎的すぎる気も……?
手前では、他のメンバーが試合形式の練習をしているようだ。
「2つに分かれて練習してるんスね」
「ああ、うちはAチームとBチームの2チーム編成でやってる」
1軍、2軍ってわけでもないのか。
「俺たちはまだ1年だからね、基礎練習がメインだよ」
「えっ、笠松センパイや小堀センパイのレベルでも?」
「笠松はともかく、俺レベルの選手なんてゴロゴロいるよ。皆各地で名のある選手ばかりだ」
「はー……すげぇんスね」
春に参加させて貰った合宿でも感じだことだが、やはり肉体の仕上がりが違う。
目の前にいる小堀センパイでさえ、一緒にプレイしていた当時よりも一回りガタイが良くなった気がする。
「俺たちが上級生ならなんとか監督に頼み込んで練習参加も出来るかもしれないけど、見学だけでごめんな」
「いや、いいっスよ、練習見れるだけで十分っス」
「十分です!」
既にみわは手元のノートにあれこれと書いている。
「終わったら笠松連れてくるから、暫くここで見学してて貰えるかな」
「ハイ、頑張ってください!」
みわにそう声を掛けられるとセンパイは嬉しそうにはにかんで、コートへ戻っていった。
……小堀センパイ、もうみわに気持ちはないんスよね?