第68章 際会
静かな和室。
自分の部屋の筈なのに、もう全くの別空間に迷い込んでしまったような錯覚に陥っていた。
「ね、みわ……」
「……ん」
涼太の心臓部分に手を当てると、鼓動が速くなっているのが分かる。
とく、とく、とく、とく、とく
ああ、生きてるんだ……
そんな当たり前の事で安心しているなんて知られたら、笑われてしまうだろうか。
どんどん、好きになっていく。
あなたに恋をしてから今日まで、どれだけのあなたを好きになっただろう。
これからもこうやって、ひとつひとつ好きになっていくんだろうな。
その鍛えられた首に手を回して、強く引き寄せた。
「りょうた……すき……だいすき……すきすぎて、どうしたらいいかもう、わかんないよ……」
コート上で誰よりも輝く涼太が。
コート上で涙する涼太が。
私の隣で笑う、照れる、泣く、怒る、拗ねる……
すべてのあなたが。
すき……。
行き場の無い想いが、涙になって溢れてくる。
「すき、涼太」
「……も、オレのぺらっぺらの理性が……」
熱い唇が、重なった。
涼太の気持ちが流れ込んでくるようで、こころが満たされていく。
「ガッツくばかりじゃなくて、ちゃんとみわの事考えられる紳士的な一面を……って思ったのに、台無しじゃないスか……」
真顔でそう言う涼太が可笑しくて。
「いっつも私の事ばかり考えてて、我慢してる癖に……」
涼太が熱く、硬くなっているのが分かる。
私に、興奮してくれてる。
それが嬉しくて嬉しくて、仕方ない。
「みわ……このままずっと、抱き締めさせて……」
「涼太、このままじゃ……辛くない?」
涼太の息も上がってる。
男の人の方が、女よりもずっと辛いはず。
「ん……いい。みわと、くっついてたい」
小刻みに上下する涼太の胸。
私も極度の興奮状態。
求め合う気持ちが、力強い抱擁に変わっていく。
背骨が折れてもいい。
ずっと、この腕の中にいたい。