第68章 際会
「で、どーなんスか?」
その顔を見なくても、その声を聞くだけで嬉しそうに口角を上げている姿が容易に想像つく。
「……かっこ、いい」
ぽそりと言葉を投げ捨てるように言い放つと、涼太は何も言わずに腰に腕を回してきた。
ぐっと身体を引き寄せられると、涼太との距離が突然近くなる。
「きゃ」
つい、力を入れて目を瞑ってしまう。
「いいんスか、目ぇ瞑ってたら……食べちゃうよ?」
「え、何……?」
意味が分からなくて目を開けた瞬間、涼太との距離がゼロになり、唇が重なっていた。
「んん!」
驚きで、反射的に目を見開いていた。
薄く開いた琥珀色の瞳が、まるで狙った獲物を食む獣のように獰猛に光っている。
しかし、その瞳は野蛮さと相反するはずの繊細さと美しさも兼ね備えていて、見つめられるともう、目が離せない。
どくんどくんと、心臓が飛び跳ねているのを感じる。
唇からは絶えずうねるような快感が与えられて、意識が飛びそうだ。
段々深みを増していく口付けに翻弄され、もう身体からは全ての力が抜けてしまっていた。
「ん、みわ……美味し……」
「っは……ン」
「そんなエロい声出して誘って……自覚あんの?」
「ぇ……ぁ……」
唇が離れてもいつまでも身体の芯に残る余韻に、ピクピクと身体が反応してしまう。
「今日は出来ないんだったっスね……せめて、センパイの大学に行く前に、マーキングしておかないと」
「ふぇ……?」
力の抜けた身体は簡単に組み敷かれ、夏の訪れと同時に生地が薄くなった部屋着は、この獣の前であっという間に剥がされた。
「あ……っ」
「セックスする気はないけど……みわに触れちゃいけないわけじゃないっスよね?」
薄くて柔らかい唇がデコルテを這い、ささやかなふくらみの胸部へ降りてきて、触れたところから電気が走ったように、ビリビリと甘い痺れを残していく。
「んっ、ん」
いつも肌を擽る前髪が、ない。
何故か物足りなさを感じてしまい彼の髪に手を差し入れると、すぐに指に頭皮が触れた。
「は、はぁ……っ」
剥き出しになった額に、耳に、首に涼太の中の男が強く現れていて、私の中心が呼応するように疼く。
……欲しい。
このひとが欲しくて、堪らない……。