第68章 際会
食事をとって、お風呂に入って。
髪を乾かして、歯を磨いて。
遠征後というのは、意外にも見えない疲れが溜まっているものだ。
今は涼太のストレッチの補助をしている。
「……ん、サンキューみわ」
「うん、それじゃあ布団に横になって」
長時間のバス移動で凝り固まった筋肉をほぐしてから寝た方が、翌日の疲れが断然違う。
そう言って涼太に声をかけたけど、彼は畳の上に座ったままだ。
「どうしたの、涼太?」
じっとこちらを見つめている気配がする。
対してこちらはというと、未だに彼を直視出来ない。
短髪涼太に慣れないのだ。
「で、みわ、どう?」
キ、キ、キター!
「な、何が?」
「ふたりきりになったら、ゆっくり感想聞くって言ったっスよね?」
「あ、うん、そうね、そうだね」
ぷっくっく……と笑い声つき。
非常に楽しんでいらっしゃるようで。
「はいみわ、座ってココ」
涼太は自分の隣の畳をペシペシと叩いている。
……これは避けられぬ試練。
観念して涼太の隣に座る。
「ちゃんと見てくれたっスか?」
「み、見たよ!」
チラッとだけ、見たよ。
「ほら、ちゃんと見て、みわ」
わーわーわー!
そうだ、涼太の事は里芋だと思えばいいんだ。
里芋
里芋
里芋
そうやって心の中で呟きながら、顔をゆっくりと上げた。
視界に入ってきたのは、キマリすぎてて眩しい里芋だった。
いや違う、こんなカッコいい里芋があるわけない。もっと違う例えをするべきだった。
「ねえみわ、そこまで?
正直、オレこの反応に驚いてるんスよ」
の、のんきに言って……!
「だ、だって全然違うじゃない」
「そーっスか?」
涼太が前髪をくるくると弄っている。
なんていうんだろう、髪が隠している部位がないんだ。
少し目にかかるようになっていた前髪は眉毛の高さまで、耳を少し隠していた髪も短くカットされて、形の良い耳が良く見える。
更に、最近のウエイトトレーニングで太くなった首が殺人級の破壊力で……。
今までよりも、更に男らしくなった。