第14章 花火
「暗くなって来たっスね」
部屋に戻ると、だいぶ日が傾いていた。
オレは、みわっちが好きだ。
めちゃくちゃ好きだ。好き。
でも、正直こんなにうまくいっているのが、怖い。
オレ、みわっちに触れるとタガが外れて、全然抑えられないのがよく分かった。
早く気づけよって感じだけど……
今までそーゆートコ結構器用にやってきたつもりだったから、女の子に気軽にキスとかボディタッチとかしてたけど、このままみわっちにも同じようにしてたら、まずいっスね……
自分を抑えきれずに、押し倒したりしたらサイアクだ。
心の準備も出来てないみわっちにこんな事を続けてたら、オレのことをきっと嫌になる時が来る。
ゼッタイ来る。
やっぱり、バスケを目一杯できないと溜まるんスかね……
ウィンターカップまで、またひたすら練習だし、いい機会だ。
みわっちとは少しだけ肉体的な距離を置いて、今みたいにサカってばっかりじゃないトコ見せないと。
嫌われてしまう。
飽きたら、もういらないって言われてしまう。
身体だけの繋がりになってしまうのもやっぱり虚しい。
「黄瀬くん、ひとり暮らしって、寮には入らないんだね」
「ああ、春なら空いてたんスけど、今ちょうど空きがないみたいで。
まあ、1人になりたい時間もあるからちょーどいいっスわ」
「そうだよね、黄瀬くんどこ行っても人気者だから……」
「人気者か……」
モデルだって、人気商売だ。
飽きられたらおしまい。
オレの代わりなんて山ほどいる。
キセキの世代だって、故障したら使い物にならない。
並の選手以下だ。
コイビトだって別れたら終わりだ。
永遠、なんてあるのかな。
オレ、永遠に誰かから必要とされること、あるのかな……
「……そろそろ行くっスか?」
「うん! バケツ持っていかないとね」
外に出ると、うだるような暑さは心なしかおさまっていた。
「……まだ蒸し暑いっスね〜」
「ほんと、折角シャワー浴びたの……に……」
みわっちがさっきのを思い出しているんだろうか。
顔を赤らめて、ちょっと気まずそうにしてる。
「また浴びればいいんスよ。あ、そこの公園。人もいないし、丁度いいっスね!」