第67章 想い
「ごめんね、遅くなって」
屈んで顔を近づけて目を合わせると、みわは驚いたように目を見開いて、顔を赤く染めた。
「ううん、こちらこそ……わ、私赤司さんに凄く失礼な態度……」
今度は顔が青くなっている。
赤くなったり青くなったり忙しくクルクルと変わる表情は全く飽きる事がない。
「大丈夫。赤司っちならちゃんと分かってるっスよ、IH前のこの状況で、みわの気持ち」
「そ、そう……かな……」
「あのヒトはそういうヒトっス」
オレを大切に思っているが故に、旧友と分かっていてもああして攻撃的な視線を送ってしまうこと。
上に上がるためには必ず倒さなくてはならない敵校であるということを意識して、強張ってしまう表情。
赤司っちは、多分言わなくても全部分かってる。
「ああああちゃんと、謝らないと……」
目線を落として頭を抱えているその身体を、優しく抱きしめた。
「心配かけてゴメン」
「……うん」
みわは、オレの肩に頭を預けて深く呼吸をしていた。
「みわがオレに早く会いたいってカワイイメッセージくれるから、オレも会いたくて会いたくて仕方なかったんスよ……」
「だ、だって……」
意外にも、みわから否定の言葉は出て来なかった。
"早く逢いたいな"の変換は間違ってなかったってこと?
ああ、試合前だっていうのに、頭がみわでいっぱいになっていく。
もう、みわの事しか考えらんない……。
腕の中に包んだ温もりが、更に温度を上げていくのを感じる。
このまま、一緒に溶けてしまいたい。
でも。
「さ、練習だよ!! 行くよ、体育館!!」
この状況でそんな甘い空気は許さないみわが堪らなく好きなんだった。