第67章 想い
「赤司っち、サンキュ。ちょっとゆっくり考えてみるっスわ」
「礼には及ばないよ。ただ紹介しただけに過ぎない」
こうして色々な人から様々な紹介をして貰える、笠松センパイの大学の話もそうだけど、ありがたいことだと思う。
同時に、オレはバスケの事をよく知らないんだな……と反省もしている。
「じゅーぶんっス」
貰ったパンフレットをスポーツバッグに収め、ついでにスマートフォンを取り出した。
「ゴメン、ちょっとケイタイ見るっスね」
「ああ」
メッセージ受信、なし。
……まあ、そうっスよね。
オレが帰る時に連絡するだけっスよね。
桐皇と練習試合した時のメッセージ、驚いたけど嬉しかった……。
気持ちが届いたのか、画面を見た瞬間にブルブルと震え「新着メッセージ受信」の文字が。
急いで画面を開くと、まさかのまさかのみわからのメッセージだった。
"こちらは今、京都に戻ってきたよ。
体育館が使えるまでにはまだ少し時間があるから、ゆっくりお話してきてね。
戻る時、連絡ください。
待ってます。"
下には体育館使用時間が記載されていた。
なんだ、これは。
え、みわ、オレをどうしたいの?
なんスか、この破壊力。
いや、ただの「待ってます」だ。
これは「連絡待ってるね」って意味だ。
「早く逢いたいな」に変換されているのはオレの脳みその勝手な機能だ。
"もうすぐ店を出るよ。また時間が分かったら連絡する!"
赤司っちの手前、そんなに時間をかけるわけにはいかないので簡素な返信になってしまった。
ささっとスマートフォンを仕舞って赤司っちに向き直ると、彼はくつくつと笑っていた。
「? どしたんスか、赤司っち」
「いや、楽しそうで何よりだ。そろそろ出ようか」
赤司家の豪華なクルマが京都の街を走り抜けていく。
京都の人の運転は荒いって聞いた事があるけど、ホントなんスかね?
窓の外を流れる景色は、神奈川で見るのと大差ない、チェーン店の看板だったり百貨店だったり。
京都って、市街地は普通の街なんだな、とか当たり前の事を思ってしまった。
ほら、どうしたって寺だなんだってイメージがあるから。
みわと2人で観光とか、楽しそうっスね。
彼女と一緒なら、行きたい所ややりたい事ばっかりだ。