第67章 想い
厚みのある肉をすっかり胃に収め、近況をぽつりぽつりと話していたと思ったら、赤司っちがカバンからパンフレットのようなものを取り出した。
「ああそうだ。顔を見て話せたほうがいいかなと思って」
「……アメリカ、短期留学?」
パンフレットには、夏休みバスケットボールキャンプ、と書かれている。
「なんスか、これ」
「その名の通り、アメリカの大学が主催しているバスケットボールの国際交流だよ。
その大学はNBA選手を多数輩出している名門だ」
確かに、この大学名は見覚えがある。
月バスかなんかで見たんだろうか。
「大体毎年IH直後から1週間弱。
将来を考える上では絶対にプラスになる経験だ」
「今年のは締め切ってるから……来年、ってコトっスよね」
「そうなるな」
小中高生向けのバスケットボールキャンプ。
なんて魅力的なイベントだろう。
パンフレットには、スケジュールや詳細の他に現地での写真なども多数載っている。
しかし、概要の中に書かれている金額を見て思わず目を剥いた。
費用の欄には、10万単位の金額が書かれていたからだ。
さすがに……オレもバイト代はちまちま貯めているが、全てまかなえる程のものではない。
「参加費用に含まれないものは欄外に書いてある」
そう言われて見ると、往復航空運賃などは費用に含まれてないと書かれている。
……これは……費用的な面で、かなり難しい。
「……こりゃまた……高いっスね……」
「急に言われたのでは困るかと思ってね。
まあまだ1年ある、よく考えるといい。
来年になれば気持ちも色々と変わっているだろうしね。オレは青峰にも紹介してみるよ」
「青峰っちも?」
「ああ、バスケを仕事にしたいと考えるのは、後は青峰くらいかな」
バスケを……仕事に……。
まだ、現実味のない言葉だ。
青峰っちに憧れて始めたバスケ。
仕事……。
将来……。