第67章 想い
開会式自体は、非常にアッサリしたものだった。
突っ立って話を聞いて。オレの苦手な時間だ。
2時間半ほどの時間だったが、終わった頃にはグッタリしていた。
なんか、この開会式には出なくてもいいようなそんなようなウワサを聞いたけど、実際のトコどうなんだ。
これでまた京都にトンボ返りか……。
バスに向かおうとすると、前方に見慣れた頭を発見した。
「あ、赤司っちだ」
赤司っちも、開会式に出ていたのか。
まあ、彼の家は京都なんだから当然かもしれない。
「赤司っち!」
振り向いた赤司っちは、いつもの通りだ。
緊張感も、焦りも感じられない。
「黄瀬か。遠くまで大変だな」
「赤司っちもこのまま京都に帰るんスか?」
「ああ。各自昼食を済ませてから集合だよ。
午後からは学校で練習だからね」
そうか。学校の体育館で練習が出来るのか……当たり前なんだけど、羨ましい。
「海常もこのまま京都へ戻るのなら、昼食でも一緒に食べないか」
まさかの赤司っちの申し出。
「いや、ウチらバスで移動っスからね、ちょっと厳しいかな……」
珍しい。
赤司っちと2人でそういう時間を取ったことは今までないし、興味はあったんだけど。
「そうか、残念だな。
帰りはオレの家の車で送るが」
「行ってきたらどうだ、黄瀬」
「中村センパイ」
オレの後ろを歩いていた中村センパイが、突然そんな事を言い出して。
「どうせこのままバスで移動して、どっか大きなところで食事するだけだ。
相手も相手だし、ついでに情報も収集しておけよ」
「大丈夫なんスか、そんなの」
「ありがとうございます。お借りします」
監督には言っておくとさらりと告げて、中村センパイは行ってしまった。
いいのか、ホントに。
「貴女もどうですか、神崎さん」
横に居たみわが驚いたようにその目を見開いている。
「いえ、せっかくの2人の時間なので、ごゆっくりどうぞ! りょ、黄瀬くん、戻る時連絡下さい」
「ん、分かったっス。皆には心配しないように言っておいて」
みわは困ったように眉を下げて微笑んだ。
「それでは、私はこれで失礼します」
「また次の機会にでも」
ゆっくり紹介出来ると思ったのに。