第67章 想い
「……そろそろ、戻った方がいいよね」
「ん、そっスね」
みわ、気分は少しは変わっただろうか。
さっき感じた寂しさ、オレで埋められる?
「……みわ、あのさ」
「……いつまでそーしてんだよ」
「え」
突然みわのものではないひっくい声が聞こえてきて、思わずキョロキョロと辺りを見渡した。
身体を起こしてみると、背後に立っていたのは、3つの影。
「あ……か、笠松センパイ!?」
「ええっ!?」
みわも驚いて起き上がる。
そこには、かつての3年生……笠松センパイ、小堀センパイ、森山センパイが立っていた。
「セ、センパイたちどーしたんスか?」
「そりゃこっちのセリフだ。
メシ食い終わって旅館に行こうと思ったらこんなとこで人が寝転んでやがるから、死体かと思ったじゃねーか」
そうだった。
センパイ方はカントクの車で後から来てくれるって話だった。
「カントクは?」
「旅館の前の駐車場が満車だったから、少し離れた駐車場に車停めてる。
お前ら、早く宿戻れよ」
「は、ハイ、スンマセン」
……良かった……。
みわが止めてくれて、ホンットに良かった。
危うくアオカンしてんのをセンパイ方にバッチリ見られるとこだったっス……。
「明日はどこで練習すんだ?」
「会場になってる、運動公園内の体育館っス」
とはいえ、各校時間を区切られての練習になるから、体育館でボールに触れられる時間はそんなに長くないだろう。
「開会式に間に合うように行くんだから、朝早いんだろ。さっさと寝ろよ」
「す、すみません……! 涼太、戻ろう」
振り向いたみわのその笑顔が眩しくて。
センパイ達の後ろを歩きながら、細く小さな手をこっそりと握った。
ぎゅっと握り返してくれるのが、嬉しかった。