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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い





「……早く寝ないと、明日開会式だよ」

涼太は本当に私がお風呂を済ませるまで待ってくれていて、今は2人、旅館の外へ出て来た。

遠出しないからって旅館の浴衣姿なんだけど、いいのかな。

「ちょっとだけ、ネ」

彼は男性用で一番大きいサイズの浴衣を着ているにも関わらず、その裾からは収まりきらなかった足が覗いている。

私にも足は2本ついているけれど、私と彼のものは、持っている価値が全く異なるものだ。


「どこに行くの?」

「ん~、ふたりきりになれる場所、っスかね」

涼太の行動は、本当に読み切れない。

川沿いにあるこの旅館は、夜になると虫の声と川のせせらぎしか聞こえない。

その優しい音とは対照的に、川辺は暗く、何者も呑み込んでしまいそうな迫力でそこに佇んでいた。

ちょっと暗いから……本当は手を繋ぎたいけど、こんな所で他の部員や他校の人に見られてもちょっと気まずいかも。

少しもどかしい気持ちで並んで歩いた。




川の上流に向かうように2人で歩いていると、ベンチが1つだけ置いてある、小さな丘のような場所へ出た。

人はいない。
視界は開けていて、川から旅館から、昼間なら様々な場所が見渡せるのであろう。

この辺りは温泉街という訳でもないし、かといって住宅街でもない。

この時間にわざわざ宿を抜けてここまでくる人はいないようだった。

少し大きめの木のベンチに腰掛けると、ギィと軋んだ。

梅雨の長雨で木が腐食していないかが心配だけれど、大丈夫みたい。



「わ……!」

座ったままふと空を見上げると、まるで2人で見たプラネタリウムのような光景が、頭上に広がっていた。

電灯溢れる都会では、霞んで見えなかった星々。

まるで、そのまま降って来そうな大パノラマ。

「すげ、星だらけ」

隣に座った涼太も、同じように声を漏らした。

「なんかプラネタリウムで見たけど、実際見るとどれがどれだか全然わかんねっス」

「あそこにあるの……あれが、デネブ・アルタイル・ベガ……夏の大三角だよ」

「あーなんかそれ、言ってたっスね」

初めてのプラネタリウム。



涼太とは、色々な初めてを経験してる。

彼へのこのドキドキですら、いつも初めてみたいに感じるんだ。



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