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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


「みわ……戻ろっか、部屋」

「あ……っ、ごめんなさい、大丈夫」

皆がいる前でこんな態度、情けない。
サッと涙を拭って、これまで付き合ってくれた陽泉の2人にお礼を言わなきゃ。

「お2人とも、大会前の大事な時間なのに申し訳ありません。ありがとうございました」


「お腹すいた~。室ちん、かえろ」

紫原さんのその素っ気ない気怠げな態度の中には、気遣いのようなものを感じた。

「……ところで、神崎さん、だっけ。売店に用があるんじゃなかったのかい?」

「あ、そうでした……」

そうだった。氷室さんのその言葉で本来の用件をようやく思い出した。
もうすっかり忘れてしまっていた。

客室へ通じるエレベーターは売店がある階にしかない為、皆で売店前まで戻る事に。

「みわ、何しに来たんスか?」

「あの、ボールペンが折れちゃって、買いに」

「……ボールペンって、折れるんスか?」

「見た目からは予想もつかないけれど、意外に……」

涼太の驚いた顔に、更に氷室さんまでその話に乗ってきて。

「ちょ、ちょっとうっかりして!」

なんか私がへし折ったみたいな空気になってるけど、違うもん!

「みわ、イライラしてたの?」

「ち、違うよ! 私が折ったんじゃないよ! いや、私が折ったんだけど、違うの!」

もう、何言ってるのやら。



売店の前に戻ると……売店は、牢屋のようなシャッターが閉まり電気も消え、既に閉店していた。

「あれ……」

旅館の売店はそんなに閉まるのが早いのね。
知らなかった、ついコンビニくらいの感覚でいたら。

「閉まってるっスね」

「……明日また来るよ……」

ヘンな人にも絡まれたし、もう私は一体何をしに来たのか。
残念すぎる……。

ついがっくりとしてしまうと、目の前にボールペンが差し出された。

「これ、あげる~」

紫原さんがそう言って差し出したボールペン。

「え、いいんですか?」

「どうせ使わないし。なんかの記念で貰ったやつ」

その細いボールペンを見ると、陽泉の校章と高校名が印刷されていた。

「あ、ありがとうございます」

いいのかしら……。

「じゃーね」

紫原さんは振り返る事もなく行ってしまった。





「意外だな、アツシはああいう子が好みかい?」

「……別にそんなんじゃねーし」



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