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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


「紫原っちも、何してんスかこんな所で」

「黄瀬ちんこそ何してんの〜」

「オレは今風呂上がりで……ってそんな事呑気に話してる場合じゃなさそうっスね」

湯上りの上気した肌が眩しい。
さすがモデル……とか言っている場合ではない。

隙さえあれば脳みそがどんどん脱線しようとする。助けて。

「少し歩き回ったんだけど、全然見つからなくて……もう、フロントに行こうかなって思ってたんだ」

「あ、じゃあオレと紫原っちが行ってくるっス」

「はあ? めんどくさいし〜」

「ほらほら紫原っち! 人助けっスよ!」

「じゃあ、俺が行こう」

嫌がる紫原さんを制して、氷室さんが名乗り出てくれた。

氷室さんはその顔に優しい微笑みを湛えているけれど、距離の取り方があからさまだ。

彼に子どもは苦手という意識が根付いてないといいけど……。

「よ、よろしくお願いしまーす!」

涼太と氷室さんの背中を見送った。

「りょー……た?」

りょうちゃんは、今まで2人がいたところを見てぽつりと言った。

きっと、同じ"りょう"という音に反応したんだろう。

「そ、あのお兄ちゃんは涼太っていうんだよ」

「りょー、いっしょ?」

「そうだね、りょうちゃんと同じだね」

「うん!」

突然涼太が現れて、気分も変わったのかりょうちゃんはニコニコし始めた。

とりあえず、こんな小さい子どもと接する機会がないから、何を話したら気を引けるかなんて分からない。

暫くすると、りょうちゃんは退屈しているようでぐずってきた。

「これ、あげる」

紫原さんが、どこかに隠し持っていたまいう棒をりょうちゃんにあげると、嬉しそうに微笑んだ。

「にーに、あいがと!」

「紫原さん、ありがとう」

「……別にそんなんじゃねーし」

彼は照れたようにそう言った。
キセキの世代は皆素敵な人ばっかりだ。

その後は、昔ながらの童謡を歌ったら、手を叩いて一緒に歌ってくれた。

広げた手が時々顔面に飛んでくるけど、小さい手がこれまた可愛くて。

幸せなんだろうな。
素敵だな。

まだ見ぬりょうちゃん一家を思い浮かべていた。

「みわ! りょうちゃんの家族、見つかったっスよ!」

暫くして、涼太と氷室さんが戻ってきた。


大人の男性を連れて。


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