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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


「お名前、言えるかな?」

「りょー」

「りょうちゃんっていうの? 私はみわ。よろしくね」

聞きなれた響きの名前に、思わず頬が緩む。


「さて、フロント……」

「あっち」

「ん?」

フロントへの階段を上ろうとしたら、りょうちゃんはあさっての方向を指差した。

「あっちにママがいるの?」

「あっち」

「行ってみようか」

「うん!」

3歳くらいかと思っていたけれど、もしかしたらもう少し幼いだろうか。

話せる単語はまだそんなに多くないみたい。

私たちが歩き出すと、紫原さんと氷室さんがついてきてくれる。

「あ、あの、私この子のお母さんを探してみるので……」

「さすがに放ってはおけないな。俺たちも手伝おう」

「あの、でも試合前の大事な身体ですし」

「それは君も同じだろう? さあ、行こう」

さっくりそう言われて、同行して貰う事になってしまった。



「あっち」

その声に誘導されて旅館内を歩き回っても、未だりょうちゃんのお母さんは見つかっていない。

「りょうちゃんのおかあさーん!」

そう言いながら歩いてみても、心当たりのある人すら見つからない。

やっぱり、最初からフロントに行っておくべきだったかな。

「りょうちゃんは、ママが好き?」

「まま、しゅき!」

「そっか、早く会いたいね」

「うん!」

フロントに行こう。
見つけてあげることが最優先だ。

「すみません、私フロントに行ってきます」

「それがいいかもしれないな」

「やー、まま、あっち!」

「りょうちゃん、ママ探して貰うから、ちょっとこっちに行こうか」

「やーーーー!! ままーーーー!!!!」

りょうちゃんは大泣きを始めてしまった。

「室ちん、なんとかしてよ〜」

「俺には……」

「わあ、ごめんね、ごめんね」


「……みわ?」

聞き慣れた、安心する声。

「涼太」

肩にタオルをかけた涼太が、ちょうど私たちの後ろを通りかかった。

「何してんスか? こんなとこで」

「あ、この子のお母さんを探してて……」

涼太の顔を見て、凄くホッとした。

情けないな、私ってホントに。


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