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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


「な……っ、なんだあ!?」

突然頭を鷲掴みにされた男は驚き、敵意を剥き出しにして振り向いた。

……が、相手を見るなりすぐにその顔が青く染まる。

自分の頭を掴んでいるのは、身長2メートルを超えた物凄い迫力の……彼をそう表現するのは適切でないかもしれないけれど。

とにかく、日本人離れしたその体躯。
少し長めの髪から覗く目線は鋭い。


「……あんた何してんの。邪魔なんだけど。
……ヒネリつぶすよ」

気怠げにそう言ったセリフは、相手を恐怖に陥れるのには十分すぎた。

どう頑張っても分が悪いと判断したのか、金髪男は何も言わずにダッシュで逃げて行った。




「あの……ありがとうございました、紫原さん」


私を助けてくれたのは、高校最強のセンター。
陽泉高校、紫原 敦さん。

巨躯とも呼べるその恵まれた体格に、天性の才能。
旅館の浴衣の合わせから覗くその立派な筋肉に、思わず息を呑む。

手元にしっかりと握られたまいう棒は、彼のトレードマークのようなものだ。

その後ろから、スマートな歩き姿で近づく影ひとつ。


「アツシ、何をしているんだい?」

「あ、室ち~ん。お腹空いた~」


紫原さんは何事もなかったように、後から来た氷室さんの元へ行ってしまう。

「あれ、君は海常の」

「こ、こんばんは」

紫原さんに、氷室さん。
陽泉のダブルエースと称される彼ら。かなりの実力者だ。

「あ~、見た事あると思ったら、黄瀬ちんの彼女か~」

「へ」

「ああ、彼の」

妙に納得された2人に囲まれて、なんだか気恥ずかしくなる。


「あれでしょ、雅子ちんがホメてたマネージャー」

「そうだね。
それにしてもこんなところで、どうかしたのかい?」

「いや~、通りかかったらドン臭そうにヘンなのに絡まれてただけ~」

ド、ドン……
いや、全く否定出来ない。

「ご迷惑をお掛けしました」

ここはちゃんとお礼を伝えておきたい。
深々と頭を下げて感謝の気持ちを表した。

「なんだ、そんな失礼な男がいたのなら、呼んでくれればすぐに助けに来たのに」

そう言って微笑んだ氷室さんの目は笑っていなかった。



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