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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


「スズさん、ゴメン! ちょっと先にやっててくれる?」

食事も終わり、これから選手達の様子を伺いに行こうという時に。

さっき備品関係の片付けをしている際に、ボードと荷物の間にボールペンが挟まっているのに気付かず、うっかり力を入れたらボッキリと折れてしまった。

私はメインで涼太に貰ったボールペンを使っているからいいけれど、あれは誰でもすぐ使えるようにしている物だから、1本減っただけでも結構不便だ。

宿の売店ならきっとボールペンくらい売っているだろうという事で、売店が閉まる前に行く事にした。



「……」

宿の売店って、凄いんだね。
どこを見てもお土産だらけ。

家族旅行なんてした記憶がないし、合宿は基本的に合宿所だし、去年のIHなんかはそもそも売店なんて気にしてなかったし……。

ちょっとだけミーハーな気持ちが顔を出し、棚をチラリと見る。

……試合なんだし気にしなくていいって言われたけど、おばあちゃんに何か買った方がいいのかな。

一口サイズの温泉饅頭の箱を手に取り、まじまじと見つめた。


「それ、買うの?」


……もし買うなら、帰りの方がいいかな。
うん、そうしよう。ボールペン買いに来たんだし。


「あれ、買わないの? オネーサン」


……ん?

もしかして今の声は、私に話しかけた、のだろうか。


振り向くと、根元が黒くなった金髪の男性が、こちらを見ている。
今話していたのは、この人?

「可愛いね。高校生?」

キョロキョロしてみるが、他に人はいない。

「キミだよ、キミ。修学旅行? 今夜ヒマ? 俺の部屋に来ない?」

え?
私?

……修学旅行ではないんだけどな。
こういう場合って、なんて言うんだろう。
遠征?

「ね、学校だと消灯早くて退屈っしょ? おいでよ」

手首をガッシリと掴まれて、凄い力で引かれた。

「あの、離してください」

売店の店員さん……と思って視線を泳がせても、誰もいない。

「ここで会ったのも何かの縁でしょ。大丈夫だよ、楽しい事しかしないから」

「は、離して」

お、大きな声を出さなきゃ。
そう思うのに、恐怖で声はどんどん小さくなる。

「ビビっちゃって、カーワイイ」

「や、やめ」




引きずられながら数歩進むと、金髪の彼の頭を、後ろから大きな手が包み込んだ。


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