第67章 想い
京都に着く頃には、もう夕陽が沈みかけていた。
旅館は、格式高い……とはお世辞にも言えないが、京都らしい和風の造りで小さいながらも温泉があるし、上等だと思う。
ただ、歓迎看板には
「海常高校男子バスケットボール部御一行様」
「陽泉高校男子バスケットボール部御一行様」
と書かれていた。
まさかの、陽泉高校と同じ宿。
……まあ、どの学校も、金額的にも選択肢は狭まってしまうので、仕方ないか。
今日は長時間座って固まった身体を十分にほぐし、軽くランニングとトレーニングのみ。
明日は朝から和歌山に移動し総合開会式を行い、京都に戻って少し練習。
試合自体は明後日から始まる。
IHは競技ごとに開催地が異なるため、移動が多くなってしまうのが難点だ。
山場は、準々決勝で恐らく当たるであろう陽泉戦と、準決勝の対戦相手と予想される洛山戦。
決勝は……誠凛・桐皇・秀徳……正直、どこが上がってきてもおかしくない。
3年生が抜けた穴を、各校上手く埋めている。
どのチームが優勝してもおかしくないくらい、実力は拮抗しているように思われた。
食事は、大広間へ通されてのものとなった。
【竹の間】。
もしかしてこれ、松竹梅になってる?
陽泉さんは松だったりする?
こういうのにこだわる習慣はなかったけれど、なんとなくそんな事が気になってしまった。
大丈夫。
そんなのにこだわらなくたって、海常は強い。
私はそんな彼等を、精一杯フォローするんだ。
「神崎先輩、食後はストレッチですよね?」
マネージャーは端のテーブルに集まって食事をしている。
私が左手を十分に使えないので、スズさんのサポートだ。
「うん、お風呂上がった人からストレッチして就寝。私たちは全部終わってからお風呂になるけど、いいかな?」
「モチロンですよ!」
すっかり頼もしい後輩になってくれて、なんだか嬉しい。
骨折り損にならなくて良かった。
……今日はなんだろ、伊月さんでも乗り移ってしまっているのかな。
ダジャレというよりは、オヤジギャグな気もするけど。