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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い






夜明け前から響き渡る蝉の声。
窓を閉めていても、耳に届く。
雲ひとつ無い青空。

コンクリートをじりじりと焦がす太陽。
梅雨空はもう、どこにも見当たらない。

夏。


今年も夏が、やって来た。


「はぁ……」

遠征用のバッグに目を落とし、深呼吸をひとつ。

全国高等学校総合体育大会、通称インターハイ。
今年のバスケットボール本戦は、京都府で行われる。

怪我した左手も完治間近だ。
今年こそ、今年こそ。

「……よし!」

気合いをひとつ入れて、学校へ向かった。




「おはようございます!」

バスでの移動は時間がかかり、身体への負担も大きいため、我が校は前日入りする事になっている。

名簿にチェックしながら、バスに乗る部員達の様子を伺っていた。

既に緊張して唇が青くなってる人、去年の雪辱を晴らすと顔を赤くして興奮してる人。

それぞれの想いを乗せていく。

……涼太、まだ来ないな。


「おう、おはよう神崎」

「あ、中村先輩おはようございます。
先輩は、ここの席に座って頂けますか」

「ん、分かった」

さすが3年生。
落ち着いてるな。
安心して見ていられる、そんな表情。


「みわ、オハヨ」

あ、この声は。

「黄瀬くん、おは……」

振り返りながらそこまで言って、時が止まった。

「ど? コレ」

涼太の、髪の毛が ない。
いや、違うそれじゃ禿げてるみたいだ。
そうじゃなくて、そ、そうじゃなくて

「かみ、どうしたの」

「ちょっと気合い入れようと思って。
こんな短くすんの初めてなんスけど、どう?」

まず、前髪が短い。
そして、耳にかかっていた髪も短く切られている。

というか全体に短い。



かか

かかか

かっこいい…………!!

「どうスか? ヘン?」

「あの、ええ、大変よろしいかと存じます」

「何その反応! 似合わないっスかねえ」

「わ、黄瀬先輩カッコいい! 髪切ったんですか!?」

そこへ現れたのはキオちゃんとスズさん。
ああ、そうやって素直に感想を言えるのが羨ましい。

「ホント? みわのリアクションが薄いから変なのかと思ったっス……って、みわ!?」


気づいたら、腰が抜けていた。

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