第67章 想い
「何? ねえみわ、ホントに嘘はナシにして」
もはや涼太を纏う空気は蛇どころではない。
百獣の王のような、圧倒的なものになる。
「嘘は言ってないよ! 好きだって、それだけ伝えたかったって、そう言われただけだから」
私だって、涼太が彼女に何をされたか忘れたわけではない。
今までずっと、彼女は涼太の事を手に入れようとしているんだと思っていたからああやって家に行ったりもした。
でも今日の話を聞いてからは、今後迂闊に行かないようにしなくては、と気持ちを引き締めたくらいだ。
「も、みわモテるから心配なんスけど……」
「……それを涼太が言っちゃう?」
涼太の方こそ、モテるなんて表現では追いつかないほど女性に好かれてる。
表には出さないようにしてるけど、いつもヤキモキしているのに。
「オレのはそーゆーんじゃないからいいんスよ」
「……意味分からないしなんか不公平」
ぶうと頬を膨らませると、同じく拗ねた表情の涼太と目が合った。
ぷっ
お互いの姿を見て吹き出す。
ヒドイ顔だ、2人とも。
「はは、可愛い顔が台無しっスよ」
そう言うと涼太は両手を頬に添えて、ふんわりと重ねるだけの口づけをした。
あったかい。
この唇が触れるだけで、悩んでた事なんて、どうでも良くなってしまうんだ。
好き。
「ね、ちょっとは自覚してよ? みわは魅力的な女の子なんだって」
「……そう言われても……」
また、ムリな事ばっかり言うんだから……。
「納得してない顔してる。どーやったら分かってくれるんスか……」
少し呆れたような声を出して、ぎゅうっと腕の中に閉じ込められた。
もう、彼に獣のような空気はない。
柔らかくて、優しい雰囲気。
大きな手が、頭を包み込むように支えてくれているから、ホッとする……。
ずっと、こうしていたいな……。
ちゃんと、黒子くんにも私の気持ちを伝えよう。
想いを伝えてくれた人に、失礼すぎる。
……こうして私を想ってくれている大切な大切な人にも……失礼だ。