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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


マンションを出ると、雨はさらに強くなっていた。
風が出てきたせいで、足元がどんどん濡れていくのがわかる。

こんなにも世の中は便利になっていってるのに、傘だけはいつまでもこの形なんだなあ。




"あんな事をしたあたしが許されるとは思ってないけど、お父さんを探すときに困った事があったら相談して"

と、さりあさんが言ってくれた。
そう言ってくれるのは、素直に有難い。

……気持ちを利用してしまうみたいで、正直罪悪感もあるけれど。

どうして、皆……私なんかを。
こんな、私なんかを。



胸に黒々としたものが湧き上がる。
ダメだダメだと思っても、もやもやする。



考え込んでも仕方ない。
冬ではないにしろ、濡れたら色々後が面倒になっちゃう。

マンションは駅のすぐ近く。早く帰ろう。

……そう思ったのに、足は学校の方角へ向かっている。



海常高校、男子寮。

門の横は背の高い植え込みになっていて、身を隠すことは容易にできても、中を覗き込む事は出来ない。

でも、中が見えなくてもいい。
彼がそこにいるんだという事が分かっていれば、それで。

今頃、夕飯を食べているかな。
もう終わって、お風呂に入っているかな。
それとも、疲れて寝ていたりして。

涼太の事を思い浮かべて、ふぅとゆっくり深呼吸をしたら、真っ黒の気持ちが少し和らいだ。

「さ、かえろ。これじゃ、ストーカーみたい」

ぽそりと呟いて、今来た方向へ向き直る。

「……みわ?」

……え?

すぐ目の前に立っていたのは……

夕飯を食べているでもない、お風呂に入っているでも、寝ているでもない……

「涼太……」

Tシャツにスウェット姿で、青い傘をさしながら、手には小さなビニール袋を下げている。

「用事はもう終わったんスか? もしかして会いに来てくれた?」

そう言ってスマートフォンの画面をチラリと見た。

「来るなら、連絡くれれば良かったのに。待たせちゃったっスね」

「……ううん、声かけようとは思って、なくて……」

思いもしなかった展開に、口があんぐりと開いてしまう。

「濡れちゃうっスよ、少しだけ寄っていけば」

彼はそう言って、自分の腕が濡れることも気にせず、私の腕を取った。


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